フェイスブックの相次ぐ幹部退任から読み取れる、ザッカーバーグ氏が考える新たな方向性の「重さ」

マーク・ザッカーバーグ氏率いるFacebookは、かなり大きな出来事がありました。

Facebook loses CPO Chris Cox and WhatsApp VP Chris Daniels: Tech Crunch

プロダクトのトップであったChris Cox氏とWhatsAppのVPであったChris Deniels氏の二人がほぼ同時にFacebookを出ることになったようです。Chris Coxは、Facebookの創業期である2005年から参加していていたエンジニアの一人ですから、マーク・ザッカーバーグ氏が今年3月6日に発表した「プライバシー重視のプラットフォーム宣言」によるプロダクトの方向性に可能性を見出せなくなったということでしょう。フェイスブックの彼の投稿からその点は読み取れます。

“This will be a big project and we will need leaders who are excited to see the new direction through.”「これは大規模なプロジェクトになる。われわれには、新しい方向性にわくわくできるようなリーダーが必要だ」

ザッカーバーグ氏の宣言の要旨は下記の具合です。原文はこちら

新しいプラットフォームで実現すること

  • 1.ユーザーがプライバシーを簡単にコントロールできる
  • 2.エンドツーエンドの暗号化
  • 3.コンテンツを必要以上に長期保存しない
  • 4.暗号化と安全性の両立(テロリストなどによる悪用防止)
  • 5.Facebook Messenger、WhatsApp、Instagramでの相互運用性。将来的にはSMSも
  • 6.安全なデータ保存

以前、こちらのブログでもまとめていますが、Facebookは、Instgram以外については、プライバシー問題も絡む既存の広告モデルに依存しないビジネスモデルに移行しないと、事業の永続性に陰りが出てくると伝えています。

https://lifeforearth.com/?p=3383

重要なことは、プロダクトを作ったことがある経験者であれば、ザッカバーグ氏のこの宣言がどれぐらいFacebookにとって大掛かりなものになるか想像ができると思います。ユーザーのUX改革だけでなく、ビジネスモデルも根本的に変えることということは、かなり大きな組織改革をしないといけないわけですね。

本来は、MessengerもWhatsappも広告事業をやる予定だったので、プライバシー重視のプラットフォームに切り替えるということは、この2つのSNSには広告モデルは適用しないわけです。広告モデルは基本ターゲティング広告が今の主流です。ということは、僕らが普段会話している話の内容などを分析して、興味のありそうな広告を配信するわけです。プライバシーが全くないわけですね。そのモデルをInstagramにも持ち込むわけです。まあ、僕はInstagramには、美しい広告が流れてくるので全然広告であっていいと思うのですが、プライバシー重視という市場からの圧力がある以上、それも断念しないといけないということですね。これは、フェイスブックにとっては、かなり大きいイノベーションのジレンマを乗り越えることになります。

From Wikipedia – イノベーションのジレンマ (英: The Innovator’s Dilemma)とは、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論。クレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した。大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、カニバリズムによって既存の事業を破壊する可能性がある。また、既存の商品が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。そのため、大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に、大きく後れを取ってしまうのである。

同じ規模のイノベーションのジレンマで言うと、かつて、Appleのスティーブ・ジョブズ氏が、稼ぎ頭のiPod事業を持ちつつも、新たにiPhoneを投入し、実質、iPod事業のシェアをiPhoneが食うという出来事がありました。当然ですよね。僕もそうですが、iPhoneを持っているのに、わざわざiPod買わないですから。お金がもったいないです。ただ、この時は、すでにiPhoneまで向けたロードマップが、iPodをリリースする時点でAppleの幹部には共有されていたようなので、組織的なハレーションはそこまで起きなかったわけですね。僕もOrbを経営していた際に経験しましたが、同じことをなんども伝えて、末端の社員までその考え方を浸透しないといけないのですね。組織のサイズが大きくなるほど、その時間とコストは比例的に大きくなります。Appleもおそらく、ここには数年以上はかけて社員とのコミュニケーションを取ってきたと思います。

しかし、今回のザッカーバーグの決断は、外部要因、つまり、市場からのプレッシャーで決断を迫られた「大規模な方向転換」であったこともあり、3月6日の宣言文にもプロダクトロードマップなどは示していなかったので、やはり、組織的なハレーションは避けられなかったと言うことでしょう。新しい答えを見つけるために、方向転換だけしようというのはリーダーに続くフォロワーがいちばん途方にくれるものですからね。

僕のブログでも触れていますが、マーク・ザッカーバーグ氏は、トークン・エコノミーにかなり注目していると見ています。Messengerを使ったFacebookトークンによる安価な国際送金サービスは当然視野に入れているでしょう。さらに、Steemitのようにトークンエコノミーを使ったコンテンツプラットフォームを作ること、ないしはSteemitを買収することもできますし、競合のKikがKinを使ってdAppsプラットフォームを軌道に載せつつあるので、この辺りも認識しているでしょう。日本のLINEも海外でdAppsを展開していますね。要するに、マーク・ザッカーバーグ氏の今回の新たな方針は、間違いなくこれを連動していると見ており、さらに、これをやるとなると、人材も含めて、相当な組織改革がFacebookには必要になります。今回の二人の幹部が出たのは、そのスタートラインに過ぎないと見ています。トークンエコノミーについてはこちらにまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=3492

ただ、ザッカーバーグが、僕が以前からこのブログで書いているように、トークン・エコノミーによって、SNS自体を非中央集権的に運用するモデルに切り替えようとしているのであれば、中長期のFacebookはとても楽しみにな存在になりますね。ただ、これは、これはウォール街も度肝を抜かれるレベルのアイデアなので、Facebookの株価への影響を配慮して、彼が思っていたとしても公然と発言することはまずないと思います。

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