イノベーションのジレンマを超えられるのは起業家精神であってサラリーマン精神ではない

前回、フェイスブックが抱えている課題の話をした際に、イノベーションのジレンマの話が出たので、僕の考えを掘り下げて話をしておこうと思います。

イノベーションのジレンマとは

まず、この言葉の意味を理解することから始めましょう。

From Wikipedia -イノベーションのジレンマ (英: The Innovator’s Dilemma)とは、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論。クレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した。大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、カニバリズムによって既存の事業を破壊する可能性がある。また、既存の商品が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。そのため、大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に、大きく後れを取ってしまうのである。

そう、シリコンバレー誕生秘話でも話をしましたが、スティーブ・ジョブズがパーソナルコンピュータ市場にゼロから作りあげていたとき、IBMはそこに市場はないと判断し、既存のオフィスコンピュータに事業リソースを集中していました。しかし、Appleの急成長をみて、「こりゃ、いかん!」と言うことで参入してきたのですね。あの歴史に残るマッキントッシュのTVCMは、実はそのような背景から作られたCMです。これは、大企業が抱えるイノベーションのジレンマの典型例と言えます。マーケッターの間ではよく知られた広告です。

参照リンク:https://bit.ly/2fwMzJ8

 

https://lifeforearth.com/?p=3673

「起業家精神」を持つものはイノベーションのジレンマを乗り換えられる

続いて、もう1つスティーブ・ジョブズのエピソードを紹介します。2,000年に再びAppleのCEOに復帰したジョブ氏は、新市場開拓のプラニングを進め、その中で見出した1つが、iPod事業でした。彼の計画通り、iPodは大成功を収めるわけですが、その後、iPhoneを市場に投入します。この結果、iPodの収益とiPhoneの収益の間に、文字通り、カニバリが発生しました。しかし、ジョブズは、いずれ、iPodの経営資源はiPhoneに全て切り替えていく計画で、このプロジェクトを進め、結果、iPhoneによって、Appleは、一時、世界最大の時価総額の会社まで成長するのですね。つまり、Appleは、自力でイノベーションのジレンマを乗り越えたわけです。

別のエピソードで、僕がかつて在籍したセブンイレブンジャパンの鈴木敏文氏の逸話があります。鈴木氏が、世界的に知られるようになった「単品管理」の話をする際によく「セブンイレブンで一番はじめに売れた商品は、何であったか?」という話をされてました。答えは、「サングラス」です。今のコンビニに、サングラスは置いてないですよね。でも、当時のコンビニには普通においてあった。単品管理の中で、もっとも重要な考え方は、「二週間ごとに棚の商品を改める」と言う発想なのですね。大型スーパーのような広い売り場面積を持たないコンビニでは、売れ筋商品だけを店舗におく必要がある。以前、ネットフリックスの話でも触れましたが、プロダクトライフサイクルが短くなっている現代においては、自らの商品ラインナップをスピーディに改めながら進まないとどの業界でも食えない時代になってきています。その点はこちらにまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=4356

鈴木敏文氏は、小売業において、世界でもっともはじめにその変化に気づいた起業家で、その着想がセブンを世界最大のコンビニチェーンに育て上げました。スティーブ・ジョブズ氏と鈴木敏文氏の二人に共通しているのは、二人とも「起業家」であると言うことです。起業家は、「過去の成功」を捨てることができるのです。だからこそ、起業家は自らイノベーションのジレンマを超えていけるのです。

「サラリーマン精神」を持つものはイノベーションのジレンマは乗り越えられない

しかし、それに続く人々で、そのようなマインドセットの持ち主は、このイノベーションのジレンマは乗り換えていけないのですね。なぜなら、彼らは「過去の成功にしがみつくから」です。例えるなら、起業家精神を持つものは、レールを敷くことができるが、サラリーマン精神の持ち主は、その上で走ることしかできない、ということですね。道があるかもわからない世界に道を作るのが、「O から 1」の世界です。これは、僕はこのブログで伝えている「地球と共生する自由な人生」のコンセプトと繋がっています。いずれ、詳しく話をしますが、自由な人生を生きるには、自分の過去にしがみつかない起業家精神が必要です。

サラリーマン精神で組織が運営されていると、最後、どうなるか?というと、至るところで社内政治が生まれ、皆、リスクを取らなくなり、最後、東芝のように「不正会計」をしてしまうのですね。その点は、こちらにもまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=2938

ただ、危惧するのは、今、日本の大企業は、先の人口ピラミッドの話にあったように、日本市場が今後ますますシュリンクしていく中で、己の収益を維持するために、オープンイノベーションと称してコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を作り、事業開発を行なっています。これも、また有名な話ですが、日本は異常にCVCが多いのですよ。そして、独立系VCが少ない。しかも、独立系VCのファンドサイズが、北米や中国に比べてものとても小さい。するとどうなるかというと、以前、ベンチャーのラウンド定義の話をしましたが、SeriesAで、ベンチャー側はCVCに出資してもらうケースが多発するのですね。

ただ、CVCの担当者の多くは、起業した経験もなければ、社内ベンチャーで事業を立ち上げた経験も浅い。すると、「起業家」を支援するよりかは、むしろ起業家の足を引っ張ってしまうわけです。北米などでは、CVCは、通常、SeriesC以降です。要するに、そろそろExitを考え始めているベンチャーに対して、出資するのです。この投資シナリオにはM&Aも含まれています。しかし、日本の場合は、SeriesAでCVCが当たり前のように出てくる。起業家からすると、ようやく一番キツイ、「Oから1」の段階を超えて「よし、これからだ!」と言うときに、CVC側に囲い込まれるわけです。こりゃ、キツイですね。これは、日本社会の将来にとって「巨大なペインポイント」なのです。

日本の大企業によるCVCを使ったオープンイノベーションは、間違いなく日本を衰退させていく

そう、なので、日本では産業構造の新陳代謝が、アメリカなどと比べて圧倒的に遅いわけです。こりゃは、えらいことですね。

https://lifeforearth.com/?p=4298

しかも、独立系VCが、イスラエルのVCのように北米市場に進出するためのあれこれ支援をしてくれるわけでもない。WiLは、ファンドサイズも大きく人材的にもシリコンバレーに人脈があるチームを編成していますが、これ以外は現時点では有力なVCはいません。つまり、イスラエルに比べてかなり貧弱な状態です。この辺りは、こちらの記事にまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=4307

なぜ、そのような現状になってしまうかというと、与えられている状況が、イスラエルほど逼迫していないからなのですが、その結果、結局、「失われた??年」をメディアは、時間が経過するたびに書くことになる。そのような状況が、日本で常に起きている点をみて、僕が思うようになったのは、

組織には、必ず、イノベーションのジレンマが訪れる。ならば、組織に頼らないイノベーションを模索した方がよい

というのが僕の最近の考え方ですね。実際に、その事例はあります。ビットコインです。僕は、ビットコインを作ったのは、金子勇氏だと考えていますが、作者は一人だったわけで、かつ、彼はもうこのプロジェクトには関わっていません。また、特に組織的に動いてもいません。ビットコインに関わっている人々は、みな自発的にプロジェクトに関わっているわけです。日本のこれからのイノベーションの形は、ここにヒントが隠れていると最近考えています。

バブル崩壊以後の日本は、色々と他の国の真似事、特にシリコンバレーのモデルを参考に、新しい方向性を見出そうとしているのですが、シリコンバレーも世界最強の基軸通貨である「ドル」の後ろ盾を得て機能しているエコシステムでもあるので、正直、シュリンクしている「円」の経済で、コピーしても同じ成果が得られないのは当然なのです。このあたりはまた別の機会に書きます。

https://lifeforearth.com/?p=4230

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