シリコンバレーの基本戦略であるフリーミウムモデルに対抗できるのはトークンエコノミーだけである

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この点も、これから起業していく日本の起業家予備軍の人たちが、きちんと理解しておくべきことなので話をしておきます。話の内容は、基本B2CやSaaS系スタートアップに当てはまる話です。

シリコンバレーがフリーミウムモデルを仕掛けてくる背景

フリーミウムモデルとは、一言でいえば「タダでサービスを使える」というサービス提供モデルです。これは、彼らのスタートアップエコシステムに性質からくる着想なのですね。シリコンバレーのインナーサークルを中心とするVCの投資戦略は、基本、「特大ホームラン」を狙います。例えば、100億円のVCファンドを作ったとして、100社に投資した場合、その中からGoogleやUberなどが生まれることを期待します。最低1,000億円から3,000億円以上で上場してくれるいわゆるユニコーンIPOが1社で出ればOKという考えです。逆に日本のVCは「ヒット重視」です。大当たりはなくてよいから、100社中5件ぐらいが、100億から200億の間でIPOをしてくれればOKという考えです。

このシリコンバレーのベンチャー育成モデルは、「ゼロサムゲーム」の熾烈な競争環境を北米市場に作り出します。よくシリコンバレーの急成長しているスタートアップへの出資話などで「あと100億出資するから、その金を使って、あの競合を潰せ。」というような会話が日常的にあります。これは中国やインドも同じです。プロダクトが軌道にのってくると、あとは、勝負はほぼマーケティングで決まります。1ユーザーあたりの獲得コスト(Acquisition Cost)をどれだけ引き下げられるか?が勝負なのです。

一番、手っ取り早い方法はその「Acquisition Cost」をゼロまで引き下げることです。そうすれば、経済的な理由でそのサービスを利用しないというユーザーの利用ハードルをゼロにすることができます。これが、フリーミウム戦略の基本骨子です。そうすることで、ネットワーク効果を一気に最高レベルに引き上げることができるのです。

と同時に、その間は、ベンチャーはずっと赤字を垂れ流し続けます。つまり、戦争でいう「総力戦」を展開している状態です。つまり、資金調達戦で負けたらその時点で、市場から脱落するというシンプルなゲームルールが働くわけです。そして、北米のベンチャーは、これで創業してから最大5年ぐらいは十分耐えられるだけのリスクマネーが市場に存在します。以前、こちらのブログで僕が作ったとてもシンプルなイノベーション指数の話をしました。

1:34というリスクマネー格差

VC投資額に対する預金残高の比率、これを僕は自分でその経済の「イノベーション指数」と呼んでいます。日本のベンチャーキャピタルの年間投資額は、2016年実績で大体2,000億円弱ぐらい。一方、預貯金は1,000兆円です。つまり、日本のイノベーション指数は、0.02%なわけです。一方、シリコンバレーなどを有するアメリカがどうかと言うと、2015年の銀行の預貯金が10.6兆ドル(日本の1,000兆円とほぼ同格レベル)に対して、2016年のVC投資額が720億ドル(7.5兆円)ですから、イノベーション指数は、6.8%です。指数なのでシンプルに100倍して、日本:2 に対して アメリカ:68という風に理解すると良いと思います。34倍、恐ろしいレベルの格差ですね。

また、日本の市場はアメリカに対しては解放されています。中国のように閉じていません。なので、アメリカのスタートアップはいつでも日本市場に入ってくることができます。この前提条件を踏まえると、簡単に言えば、2,000億円VS7.5兆円の戦争をやっているのですよ。太平洋戦争のときのアメリカと日本の工業力格差が20倍でしたから、34倍は、つまり、そのときより1.7倍も悪条件の中で勝負を挑んでいるわけです。リスクマネーが全然足りていないわけですね。この点は、金融庁の委員会メンバーの際に、金融庁の若手官僚の方々にも伝えています。

つまり、ゴール設定をしっかりコントロールしていないと恐ろしい目に合うわけですね。例えば、日露戦争をやったときの明治日本は、日本とロシアの実力差をしっかり理解していました。だから、帝政ロシアと戦争するにあたり、初めから陸戦では奉天会戦、そして海戦では日本海海戦に勝利したら、「講和に持ち込む」という基本的な戦争方針をたて、これを一切ぶらさず、アメリカを仲介役に立てる外交調整まで含めて、全て平行し一切を抜かりなくやりきり、勝利をしました。つまり、プロジェクトのゴール設定がきちんとできている。ところが、その後の太平洋戦争や戦後の高度成長、いわゆる「昭和の時代」ではこのゴール設定が全くありませんでした。「行けるところまで行け!」というのが実態だったのですね。現時点の日本のスタートアップにもこの傾向は非常に強いですね。このような状態が生まれる背景は、日本のVCの投資戦略とスタートアップ側の置かれている現状に巨大なミスマッチがあるからですね。

日本のVC側は、先ほど伝えたように、ヒット重視で手堅くIPOして欲しいという考えている一方、スタートアップ側は、このまま日本市場に頼っていたらIPOした後に自分たちは沈んでしまう。早くグローバルに出て行かなくてはならない。しかし、グローバルのVC競争は、北米、中国、インド、とも特大ホームランを狙うルールで動いている。つまり、日本のVCに求められるように会社を経営していたら、いとも簡単にグローバルの競合に潰されてしまうわけですね。

また、IPOした後の資金格差は、ベンチャー市場ほどではありませんが、売買高ベースで見ると7倍程度あります(以下の図を参照)。本来は時価総額ベースで見たいところですが、データが見当たらないのが残念です。日本のVC的には、投資先のスタートアップには早く上場してもらい、この格差で勝負してくれといいたいと思います。ただ、日本のVCは、中国、インド、北米のスタートアップにも出資してポートフォリオのリスクを分散しているわけですから、日本で起業する若者はこの辺り、事業経験のないVCの言葉に振り回されないようにした方が良いです。また、北米のベンチャーも、最近は、IPOをできる限り遅らせる傾向にありますが、その背景は、IPOすると戦略を開示しなければならなくなるからです。ですから、早くIPOするほど、グローバル競争では不利な状況に追い込まれるということが分かっているからですね。ここも、日本のVCと、日本発のスタートアップの間に、巨大なミスマッチがありますね。

参照リンク:https://bit.ly/2VYDKIr

一方、以前に紹介したイスラエルのスタートアップエコシステムは、とても戦略的です。その点はこちらにまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=4307

イスラエルのスタートアップは、初めから自分たちの国内市場をインキュベーションするための市場としてしか見ていない点、ここがもっとも重要だと考えています。日本のように、そこで大きなユーザーベースを作ろうなどと、はなから考えていない。

初めから国際チームでトークンエコノミーでの勝負には勝機があるわけ

というのが、Orbのときから変わらぬ僕のスタートアップ戦略です。イスラエルの起業家たちとディスカッションして再確認ができました。初めから日本市場には何も期待するなということです。完全に割り切ってインキュベーションの場所として使うということですね。しかも、チームは英語ができて当然で構成する。すると世界から優秀なやつが雇える。そして、資金の当ては、トークンエコノミーに見出すことです。ICOを使うか使わないかは判断次第です。なぜ、トークンエコノミーであれば、基軸通貨ドルのバックアップを受けるシリコンバレーのスタートアップに対抗できるかと言えば、トークン自体が国家経済の枠を超えた「通貨」だからですよ。この点はEthereumを見れば明らかですね。初めから、有史以来の国家経済の束縛を受けずに活動することができるのが、ブロックチェーンでありトークンエコノミーなのです。既存の「ボーダー」に依存しない経済圏ですね。トークンエコノミーについてはこちらにまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=3492

起業家の方に参考になれば幸いです!

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