三木谷氏の「プラグラミング必修」案は、日本のスタートアップ業界にとっては確実にプラス

楽天の三木谷氏が、英語に続いて今度は、「プログラミングを社員に必修化する」という発言が、NewsPicksなど含めて話題になってますね。

楽天は2018年、約260人の非技術系新卒者向けにプログラミング言語Javaの入門レベルとネットワークアーキテクチャー構築の基本スキルを含む6カ月間のコースを設けた。今年4月入社の新卒400人も研修に3カ月を費やすことになる。同社では研修を全従業員に拡大する計画はまだないとしている。

僕は、経済学専攻で、帰国子女でもなかったわけですが、これからの時代に適応するため、全て自らの努力で、英語と技術リテラシーを習得してきたので、三木谷氏の発言には全く違和感がありません。実際、僕は、金融庁のフィンテック有識者会議の場でも、日本がフィンテックの領域で世界と互角に戦えるベンチャーを作るには、戦略的移民政策として「プロダクトマネージャーを海外から連れてくるべきだ」と話をしていました。今日は、その点について掘り下げて話をしておこう思います。

シリコンバレーで、「プロダクトマネージャー」の起業が高評価を得るわけ

シリコンバレーでは、プロダクトマネージャー出身か、ビジネスマインドの高いプログラマの起業家が、インナーサークルから高い評価を受けます。最近で言えば、TwitterやSquareを作ったジャック・ドーシーも元プログラマですし、Facebookのマーク・ザッカーバーグも元プログラマですね。スティーブ・ジョブズ氏が、これからの人は、法律や金融を学ぶと同じぐらいプログラミングを学ぶべきだと言っていたのも、とても有名な話です。シリコンバレーのインナーサークルについて理解したい方はこちらです。

日本人の大半のシリコンバレーに対する物の見方が完全に間違っている

このプロダクトマネージャという職業が、楽天の三木谷氏の発言と深く関係しています。プロダクトマネージャという職種は、日本ではタイトルとしては、まだほとんど普及していませんが、シリコンバレーでは、とても重要な職種の1つとして高収入な職業になっています。

From Wikipedia – プロダクトマネージャーとは経営学用語の一つ。企業においてマーケティング活動全般の権限と責任を持つ管理者を担当する職種を言う。ここで言われている権限というのは製品の開発から、その製品の宣伝、販売、流通などの広範囲にわたっている。 プロダクトマネージャーとは職種の名称であり職位を示す言葉でなく、必ずしもマネージャー職が担当すると言う意味ではない。現実にはその製品に詳しい一般社員が担当する場合が多い。

というのがウィキペディアの説明なのですが、ちょっと正確ではないですね。一般的な話をすると、プロダクトマネージャになる人の多くは、元は大学などでコンピューターサイエンスを学んでプログラマーとしてキャリアをスタートしている人が多いです。僕の現地友人のプロダクトマネージャもそうです。しかし、その中から、ビジネスサイドに強い関心を持っている人や、もしくは同僚などにものすごいプログラミング能力やシステムアーキテクトセンスの高い奴がいて「こいつにはかなわないな」と感じている人などが、ビジネススクールでMBAをとってプロダクトマネージャにキャリアチェンジをすることが多いです。先に話したスティーブ・ジョブズ氏も同じよう具合で、彼もゲーム会社のアタリなどでプログラマをやっていたのですが、友人としてのスティーブ・ウォズニアック氏がものすごくプログラマ・エンジニアとして優秀だったので、Appleの立ち上げでは、開発は、ウォズニアック氏に任せて、彼の役割はプロダクトマネージャであったと言えます。

そして、経験を積んだ優れたプロダクトマネージャは、グロースハッカー的に、リリースしたサービスから取れるデータを分析し、機能開発の優先度をつけ、製品ロードマップを策定し、プロダクトだけでなく、マーケッターとも適宜コミュニケーションをしながら、1つないしは複数のプロダクトのユーザーベースを拡張し、収益を育てていくことをミッションにおいています。世界市場の展開を担当しているプロダクトマネージャになると、僕の友人にも一人いるのですが、世界の市場開拓戦略の立案、多言語対応や、ローカライズの課題をまとめ、本部の製品担当プロダクトマネージャと、それに関わるプロダクトロードマップの調整をしたい、現地法人のカウントリーマネージャのリクルーティングなどをします。

では、なぜ、重宝されるか?というと、テクノロジーとビジネスの両方をわかっているからです。だから、技術では何ができて、何がまだできなくて、そして、市場では何にユーザーが価値を感じているかなど、とても俯瞰的や視野で1つのサービスをみることができるのですね。

だからこそ、プロダクトマネージャ出身の起業家は、シリコンバレーではインナーサークル中心に投資家の受けがとても良いのですが、それは「売れるプロダクトを作るセンス」が他の職種の人よりも高いからです。営業やマーケティング出身者は、そもそもすでに世に出ているプロダクトを売ることはできても、そもそもどういうプロダクトを作れば売れるか?という経験は積んでないわけですね。逆に、一般的なプログラマは、ビジネスサイドからこんな機能を作ってくれればもっと売れるという要件を聴いて開発しているだけでは、なぜ、その機能に価値があるのか、ニーズをよく理解できていないまま開発していることが多いので、これまた売れるプロダクトを作れるか、投資家から見るとリスクが高いと見られるわけです。

僕の言い方からすると、売れるプロダクトを作る「シュミレーション思考」がプロダクトマネージャの方が上なのです。いちいち実際に開発してテストしなくても、頭の中でシュミレーションをすることができるので、時間とお金の節約になります。ちなみに、例外は当然いますが、ここでは一般論の話をしています。


上の図は、このブログでなんども使っている図ですが、スタートアップは、はじめは、プロダクトをリリースしないことには何も始められないので、プロダクトをリリースする力を持ったプロダクトマネージャの起業は、この点から、受けが良いわけです。

そして、もう1つ、シリコンバレーのインナーサークルからこのプロダクトマネージャやビジネスマインドの高いプログラマが重要視される背景は「コミュニケーションコスト」です。

スタートアップにとって最大の敵は「コミュニケーションコスト」

スタートアップには、お金と時間がありません。なので、一秒でも早く、優れたキラーUXを見つけ出し、機能として実装し、サービスとしてテイクオフしていく必要があります。その際に、最大の課題はチーム内の「コミュニケーション・コスト」です。大企業に比べてチームは小さいですから、その点でイノベーションのジレンマを抱えている大企業に比べて、意思決定を早くして行けるのがスタートアップの強みですが、それでも、開発経験の全くない営業やマーケッター出身者とプログラマが組んで起業する場合、開発要件を落とし込むのに恐ろしいほど時間がかかります。無駄な作業が増えると言っても良いでしょう。

なぜなら、ビジネスサイドの人材は、プログラミングをしたことがないので、夢物語みたいな機能要件を出してくることが多いのですね。そして、プログラマ側は、それはできないと回答などしていると、ビジネスサイドの人材は「こいつ、プログラミング能力低いんじゃないのか?」みたいな不要な猜疑心が生まれ、チームコミュニケーションは悪化して行きます。そうやって、チームが前に進むための「コミュニケーションコスト」が増大していくので、スピードが落ちていくのですね。

これは大企業の場合も全く同じです。大企業の製品開発のプロジェクトなどに昔コンサルティングで関わっていて、一番、ストレスを感じたのは「要件が全然決まらないので、開発が進められない。。。」ということでしたね。とにかく、ビジネスサイトと開発サイドのコミュニケーションが空回りしている。ビジネスサイドも開発サイドもお互いにお互いの仕事内容をよく知らないという「分業化の弊害」によって、時間が無駄に流れていくのです。

大企業であれば、既存の収益源がありますから、ある程度の期間はそれでも耐えられるわけですが、金と時間のないスタートアップの場合は、死活問題ですね。だから、ビジネス人材がプログラミングを学んで、プログラマ側に要件を伝える前に、自分の頭の中で、現在の技術で、何ができて何ができないかを踏まえた上で、必要機能要件を選定していくという発想が重要になってくるわけです。

冒頭にも触れましたが、僕の場合は、その必要性を起業家になることを決めたタイミングですでに理解したので、E-CommerceのITベンチャーの社長室にいた時に、社長と社長室長に自ら懇願して、プログラマの仕事を1.5年やらせてもらいました。それから比べると、三木谷CEO自らが、そのような機会を社員に与えてくれている楽天は、全然恵まれているなと思いますね。僕の場合は、自己宣言でプログラマになりましたから、言い訳が一切通用しませんので、仕事が終わったら、夜はプログラミングの本を読んで、朝からバグを直すなど、一週間、3-4時間睡眠の生活を1.5年間続けていましたから。

そして、楽天は、メルカリを育てた山田進太郎氏をはじめとして優れた起業家を多く排出していますから、三木谷氏がこの活動を積極的に推進してくれることで、僕のようなタイプの人材が、楽天から大量に生まれることになることが期待でき、それによって、日本のスタートアップ業界は、さらに洗練されていくので、これは業界にとってもとてもポジティブなこととして捉えています。

実は、この話も、このブログで伝えている「21世紀は統合化の時代」という話と実は繋がっているのですね。「分業化による弊害」とは、科学の細分化による弊害と同じで、それによってイノベーションが止まってしまったため、今は科学では統合的なアプローチが今流行っている点と同じなのです。スタートレックの世界では、一人の人類が最低5分野ぐらいで博士いレベルの知識を持っているというのは、この話と通じてくるのですよ!

20世紀は「細分化の時代」、21世紀は「統合化の時代」であるとはどういうことか?

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