NewsPicksがトークンエコノミー化すればもっと流行ると想ふ

というのを以前から考えています。もともと、僕がシリコンバレーでやっていたMusavyというコンテンツキュレーションベンチャーは、NewsPicksとほぼ同じプロダクトでしたから、この領域のプロダクトに詳しい点もあるのですが、トークンエコノミーと相性が良いのですね。Musavyは、Crunchbaseには情報があります。興味のある方は参考にしてください。

Musavy@Crunchbase

特に、NewsPicksのオリジナルコンテンツのダイジェストを見ていたら、有料会員が95,000人程度と聞いて、「まあ、月額料高いからな」と思った点もあります。もっと有料会員は多くていいと思うんですよね。今、1,400円/月ですからね。インターネットメディアのサブスクリプションの価格水準としてはかなり高いです。Appleのマガジンサブスクリプションでも$10/月=約1,200円です。NewsPicksは年間売上が13億円強になるわけですが、その収益の大半をオリジナルコンテンツ作りに割いている点もサステイナビリティの観点から考えると、トークンエコノミーを使って、もっとユーザーが高いモーティベーションで、面白いコンテンツを作れるようにできる仕組みを整えた方が良いと思います。なぜなら、現時点でも、ユーザーの大半は、NewsPickのコメントに期待しているのに、そのコメントしている人が、ほとんど恩恵を受けられていないからです。

Redditにトークンエコノミーを持ち込んだSteemitがすでにメディアに評価経済を持ち込むプロジェクトを開始しています。彼らのホワイトペーパーにも書いてあるのですが、Steemは、2014年にRedditが記事にした「Redditのユーザーに株式を報酬として与えて運営することができれば、ソーシャルニュースサイトとして、自分達のプラットフォームはもっと改善されて行くだろう」という話からインスピレーションを得て、スタートしたプロジェクトなのですね。これには、色々な意味で実験要素がありますが、コンテンツビジネスにおけるトークンエコノミーの具体的な可能性が見えてきます。

投稿者に対する評価経済

NewsPicksの場合、ユーザーがキュレーターとしてProPickerのステータスが与えられると、その人の記事がNewsPicksのコンテンツストリームの中に表示されやすくなります。Proというステータスモデルは、Product Huntを参考にして採用したのだと思いますが、まず、問題は、このPro認定は、NewsPicksが中央集権的に行なっていることです。RedditのようなKarmaランクを採用して、一定のKarmaに達した人がProPickerになれるというモデルが、民主的なモデルです。ちなみに、それは、スコアモデルにより管理社会になってしまうのではないか、とネガティブな反応をする人もいると思いますが、僕はそうならない理由はすでに見えており、それは、Karmaランクに上限があるからです。その点は、この記事を読めばわかります。

https://lifeforearth.com/?p=4928

コメントに対する評価経済

そして、コメントに対しては、基本、「Up」(=いいね)投票しかないのですが、これでは質の高いコメントは得られないですね。Up投票しかできなく、無報酬の場合は、完全なるボランティア経済しか働かないので、質の高いコメントを手に入れるのには限界があります。奉仕経済の観点から考えるとボランティア経済は正しいのですが、最近、アマゾンでお金をもらって商品レビューのフェイクコメントを書いたことが発覚しニュースになってましたが、それが今のボランティア経済の限界なのですね。多く人が、資本主義によって、お金と時間のない中で生きているので、ボランティア経済が正常に機能すると期待し続けるのにはまだまだ無理があります。

ちなみに、なぜ、資本主義がこうも効率性を重視するかは、こちらの記事を読めばわかります。マックス・ウェーバーの研究が有名ですね。

https://lifeforearth.com/?p=4505

Musavyは、議論をする場としてUXをデザインしていたのですが、そのためには、コメントに対して「Up」と「Down」の両方が必要です。更に、そこにトークンエコノミーによって、報酬が得られるモデルになれば、みんな真剣にコメントをするでしょう。とりあえずは、その1,400円のサブスクリプション・フィーからユーザーにリベニューシェアをするモデルでよいでしょう。

更に、先ほど上で話をしたKarmaランクをあげるための方法が、このコメントに対する評価になります。すると、食べログのランクと同じようにコメントを評価する人もKarmaランクを持つことで、相対化することができますから、Karmaランクを意図的にあげる行為の難易度が上がるため、悪意的行為を未然に防ぐことは、すでに証明されています。

モデレーターと言う存在の重要性

UpとDown投票をユーザーに可能にすると、議論が活発になると同時に、対立意見が生まれやすくなるので、ケンカになったりするリスクがあります。それを防ぐ役割が必要で、モデレーターと呼びます。このモデレーターモデルを始めに採用したのは、Slashdotですね。技術テーマが中心のソーシャルニュースサイトです。1997年に立ち上がったサービスなので、ソーシャルニュースサイトの走りですね。今でも技術的なテーマに関しては、かなりハイレベルな議論があるので、僕もたまに使います。この議論をコーディテートしているのがモデレーターの人で、ボランティア経済で動いています。モデレーターの人は、議論の場が荒れないように、不快なコメントをした人に内容修正依頼をお願いしたり、時には削除もします。

トークンエコノミーの世界では、モデレーターにも当然、評価経済は適用されます。まず第1のKPIは、そこにつく「Up」投票の数になるでしょう。質の高いコメントには必ず「Up」がつくものです。特にKarmaランの高いユーザーからのUp投票はより高評価とみなすべきでしょう。コメントの数は、議論のネタになる記事の質やトレンドに依存しますから、それをKPIにしてしまうと、モデレーター間の経済格差が広がりすぎて、不満に思うモデレーターが増えるでしょう。彼らに、コンテンツの質に影響を与える権限がないからですね。ですから、理想論から言うと、自分で記事を書いた人が、モデレーターする場合が、経済原理的には一番上手くいきます。

NewsPicksの現状モデルを踏まえると、NewsPicksがモデレーターを内製化するか、ProPickerがモデレーター役を兼務するか、というところにスタートラインは落ち着くと思います。

報酬の理想は現金でもらうかトークンでもらうか自由に選べること

これは、僕のトークンエコノミーは「キャピタルゲインが得られるアフィリエイトである」と言っている点と繋がっている話であり、Steemitですでに実践されているのですが、ユーザーがここを自由に選べるようにした方が良いです。Steemitの場合は、SBDというStable Coinが前者に相当し、Steem Powerというべスティングモデルが採用されているスタートアップの資金調達手段であるConvetible Noteに近いトークンが後者に相当します。そして、NewsPicksにとっては、トークンでもらうユーザーが増えた方が、現金の放出は減り、かつ、NewsPicksの長期的な可能性に賭けてくれているユーザーが増えていることを証明するマーケティング&ファイナンス・メトリックスが成立します。NewsPicksがNPOであれば、この捉え方は少し違ってくるのですが、運営側が株式会社である点を踏まえると、営業キャッシュフロー的にはプラス効果が大きいということです。これこそトークンエコノミーの醍醐味です。トークンエコノミーについて、まだよく分からないという人は、こちらの記事を読めば全てわかります。

https://lifeforearth.com/?p=3492

オリジナルコンテンツというイノベーションのジレンマを超えられるか?

最終的には、ここが、NewsPicksの最大の試練になるでしょう。なぜなら、上記のトークンエコノミーによって、コンテンツ自体でマネタイズが可能になり、かつ、報酬の一部を値上がりを期待できるトークンとしてもらえるようになりますから、ユーザーの中からコンテンツを作る動きが活発化するでしょう。正直、今のNewsPicksでも起きているのですが、ユーザー側のコンテンツとNewsPicksのコンテンツのネタが被っていることが起きているのですね。これが更に多発する可能性が大きいでしょう。シリコンバレーでキュレーションが盛り上がらなかった背景は、キュレーションサイトをプラットフォームとしてスケールさせるのが、収益モデル的に難しいからなんですね。その点はこちらにまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=2963

インターネットのプラットフォームモデルは、メディアの民主化を作り上げるために考えられたサービスモデルであり、ビジネスモデルです。日本人の多くは、その戦略性ばかりを議論してますが、思想的な背景として「メディアの民主化」があることを理解していないと、プラットフォームのような発想は生まれて来ないということ理解しないといけません。僕がよく言う大半の日本人はシリコンバレーに対して間違った理解をしていると言う話です。その点は、こちらにまとめています。

https://lifeforearth.com/?p=3673

なので、NewsPicksがコンテンツを内製化する着想は、トークンエコノミーとは対立する考え方です。すでにNetflixのようにコンテンツ制作の「業務委託」モデルを採用することはやっていると思いますが、完全にユーザーに委ねるところまで持っていけるかが、勝負どころですね。

News Picksがこの取り組みを始めればもっと盛り上がると思いますし、僕もユーザーなので(無料ユーザーですが。笑)、それを切に願っているのですが、このイノベーションのジレンマを超えられないようであれば、代わりに市場の競合に取って変わられることになるでしょう。

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