フェイスブックの「Libra」について – Orb藩札2.0との類似性

フェイスブックの仮想通貨プロジェクト「Libra(リブラ=天秤)」のプロジェクトの最新状況についてまとめたものです。フェイスブックというGAFAの1社であり、かつ世界の時価総額Top10に入る会社が、仮想通貨事業に本格的に乗り出すというのは、仮想通貨・ブロックチェーン産業が発展する上でも、かなりポジティブなインパクトのあることなので、LifeForEarthでもその動向をしっかりと追っていきたいと思います。

現状、色々なメディアで取り上げられている内容をまとめると以下のようなものになるようです。

  • 1.Libraトークン(仮称)は、ステーブルコインで開始する予定。
  • 2.Libraに参加する加盟店を募っている。小売店や金融企業など。
  • 3.Libraに参加する加盟店は、Libraの価格形成を安定的なものにするための1,000億円規模のファンドに出資する必要がある。
  • 4.Libraの用途は、送金や決済に使える。そして、その決済手数料は、既存のカードインフラよりも安い。
  • 5.ポイントプログラムがあり、例えば、FBやWhat’sup上に表示される広告を見ると小学のLibraがもらえる。
  • 6.初期のターゲット市場は、インドで考えられている。

この6点をみて思ったのは、「Orbの藩札2.0構想にそっくりやん。笑」ということですね。ということで、Orbの電子版藩札プロジェクトも踏まえながら、Libraの課題と展望についてお話したいと思います。

Orbの藩札2.0とは何であったか?

僕は、みんなが仮想通貨の投機的売買に熱狂していた2014年には、既に、「仮想通貨は、経済圏ビジネスになる」と理解していましたから、どうやって、安定的な通貨価値を作り出すか?そこにフォーカスしたソリューションを考えていました。だから、Orbは、2015年10月に世界で初めて、固定相場制の仮想通貨発行プラットフォームOrb Version 1.0をリリースしたのです。この時点では、パブリックブロックチェーンを使い、PoSモデルでリリースしました。

電子版藩札をステーブルコインにする理由

僕は、Orb1によりこの日本全国の地域通貨を立ち上げて、いずれネットワーク化し、今でいう完全にDEXで作り上げた仮想通貨取引所で売買できる仕組みを構想していました。それによって、日本円や全銀ネット、そして、NTTデータを作ったCAFISに変わる全く新しい決済インフラを作ることを考えていました。

このために、初めはステーブルコインのソリューションを提示していました。しかし、この本質を理解できている人は、周りにはいませんでしたね。なぜ、ステーブルコインが重要なのか?については、僕のこちらのブログを読めばわかります。

仮想通貨のレバレッジ取引は結果的に自分達のクビを締める

僕が、当時から、投機売買を促すようなレバレッジ取引機能ばかりを追加していくビットフライヤーなど国内の仮想通貨取引所の動きに対して、強く批判していたのですが、それは上のブログの理由によるものです。通貨というのは、実需の需給市場を育てた上で、そこに10%程度の流動性目的で投機家が参加しているぐらいがちょうどよいのです。日本のFX市場もそういう背景で産業化されたのですよ。しかしながら、日本の仮想通貨取引所は、実需を整える前にレバレッジ取引を煽ったが故に、アジアの通貨危機と同じような市場状態を当時の仮想通貨市場に作り出してしまっていました。この結果、2017年のバブル相場で個人が大損したわけです。仮想通貨の市場発展に貢献してくれる貴重なユーザーを殺しているに等しい行為ですよね。実に愚かな行為です。

僕は、そのような彼らの動向は、一切目もくれず、あるべき未来を明確に頭の中に描いて、ひたすら「正しいこと」をやり続けました。それが、フェイスブックの動きを見ていると、シリコンバレーのインナーサークルに属するマーク・ザッカーバーグ氏などになるときちんと分かってくれているんだと実感します。素晴らしいです。

ステーブルコインを使って、日常生活での利用を促進させてから、長期投資にもなるように、仮想通貨取引所のような仕組みを整えていくことを構想していました。この方がユーザーにとっては最終的なリターンが大きいのです。

地銀=加盟店開拓ができ、通貨相場を買い支えできる存在

では、なぜ、地銀を顧客ターゲットにするか?理由は、2つあり、上の2と3が該当します。まず、地銀は、地元の企業を顧客として抑えているので、加盟店開拓ができること。もう1つは、地域通貨が、取引所で売買されるようになった時に、日本円の価値を安定させるために日銀がマネーサプライの運用をすると同様に、地銀がその役をAIエンジンでできるようにするためです。地銀は、地元企業のお金を預かっていますから、これは役割として理になかっているのです。経済学の主な研究分野をきちんと理解していれば、こういう発想は自ずと得られます。

そして、それら各地域通貨のインフラが、パブリック・ブロックチェーンの上で稼働すれば、完全に非中央集権化された金融インフラに育てて上げていくことができますよね?しかし、地銀を顧客ターゲットにする中で、彼らは、キャズムでいう所のレイト・マジョリティに相当するユーザー層でしたから、彼らのニーズに合わせるために、パブリック・ブロックチェーンでかつオープンソース型のプロダクト開発は断念せねばならず、プライベートブロックチェーンに切り替えて、Orb DLTを開発しました。

そして、今度はプライベート・ブロックチェーンになると、テクノロジーとしては、クレジットカードネットワークのVISAなどと比較されることになるため、対抗できる性能水準のソフトウェアにせねばならず、これをわずか4億円で開発したことは、ものすごいコスパの良さであったと自負しています。何せ、EthereumもCOSMOSも15億円ぐらいかけてソフトウェアをリリースしていますからね。また同時に、地銀を顧客にソフトウェアを売りますから、元Oracleの人材を営業ヘッドで引き抜いたりしたわけです。

Orb DLTについて知りたい方は、こちらです。

より技術面の詳しい情報を知りたい方はこちらです。

また、戦略投資家として、SBIに参加していただいたのもこれに直結する話で、このようなプロジェクトを進めていくには、やはり、既存の金融インフラを改革していく確固たる意志を持ったプレイヤーと組む必要がありましたから、Orbのプロジェクトを推進していく上では、SBIグループは、国内ではもっとも最適な組手でした。「昭和」をひきづっている日本のメガバンクではダメなのです。ですから、フェイスブックが声をかけている金融機関というのも、間違いなく、これに相当するプレイヤーと見ています。アメリカの金融機関は、日本市場に比べて圧倒的にイノベーターが多いので、フェイスブックの選択肢は豊富にあると思います。

当然、新しい決済インフラは、既存より安くなければ加盟店は乗ってこない

これは、上の4に相当することですね。そうでなければ、地銀が加盟店開拓するのが大変になってしまいます。だから、僕は、Orb DLTのソリューションでは加盟店手数料が、日本のクレジットカード決済インフラの最低水準である3.25%よりも低い2.00%をターゲットにプロダクト開発とソリューション開発を進めていました。2.00%であれば、仮にVISAなどがデビット決済を仕掛けて来ても競争力を失わない価格水準です。これら日本のカード決済インフラの課題については、こちらのブログにまとめています。

日本のキャッシュレス化において、なぜQRコード決済の普及が重要か? Vol.1

この2.00%というのは、地銀側にとってもほぼブレイクイーブンの水準で利益は狙えません。なので、この決済インフラが手に入るだけでは嬉しいことがない。戦後の日本の官僚が推進した東京一極集中が原因で、地銀は経営が苦しいのです。救済しなければならない。そこで、彼らに提案していたのが、決済データを活用した「トランザクション・レンディング」です。会計データでは、トランザクション・レンディングはできません。これもよく分かっていない人が多いです。必要なのは、PoSデータなのです。なので、僕は、日本のキャッシュレス化構想でQRコード決済の推進を強く提案したのですよ。

今の日本のPoSシステムと決済インフラは、完全に分断されており、東芝テックやNTTデータなど、大手の誰もそこを統合化する動きをしようとしないからです。QRコード決済であれば、PoSデータも新たに取得でき、かつ、既存の決済インフラにほとんど依存しない新しい決済インフラをブロックチェーン上に作っていくことができるのですね。だから、僕は、JCBのSmartCodeなどありえない、と言っているのですね。SmartCodeは、JCBの旧態依然としたいインフラの上で動いていますから、全く価値のないQRコード決済システムです。

JCBのQRコード決済基盤「スマートコード」(Smart Code)はキャッシュレス化の本質を理解していない愚策中の愚策

QRコード決済しか、日本の国家システムの1つとも呼べる決済インフラを根本的に刷新することができないからです。だから、QRコード決済を批判している人とか、「あれは流行らない」と言っている人の話を聞くと、非常に憤りを覚えます。無責任きわまりない発言ですよね。子孫のために足を引っ張っぱる発言をしているのだから、最悪です。

地方から仕掛けることとインドから仕掛けることは同じこと

両者に共通しているのは「現金社会」であること、つまり、キャッシュレス化が遅れていることです。上のブログで伝えている通り、東京や大阪など都市圏は、電子決済が十分普及しているのですよ。だから、新しく決済インフラを仕掛けようとしているプレイヤーが電子決済が十分普及している市場から仕掛けても競争が激しいすぎるので、マーケティングコストがかかり過ぎるのです。

キャッシュレス化が進んでいないのは、地方です。インドも、まだ世界の地方です。フェイスブックがインドにフォーカスしているのも、インドが人口規模で中国につぐ潜在性を持ちながら、英語圏でかつ、金融インフラの整備が遅れているからです。つまり、アメリカ企業のフェイスブックにとって見たら、「とんでもないドル箱市場」に見えるわけです。インドのポテンシャルは、人口ピラミッドから見れば明らかですが、詳しくはこちらにまとめています。

人口ピラミッド比較からみる次世代の世界の「イノベーション・ハブ」

だから、Go to market strategyにおいても、フェイスブックのLibraはOrbと同じということです。

ユーザーに電子版藩札を使うインセンティブをどうあたえるか?

しかしながら、そう、最後に重要になってくるのが、この点です。ここを突破しなければ、Libraは立ち上がらない。Libraであれば、インドのルピーを使うよりLibraの方がメリットがあるプロダクトバリューを与える必要がある。単に現金より便利だけではパワー不足です。普通で考えれば、一般的な電子マネーと同じになってしまうので、チャージを提供するしかない。給与を藩札で払うこともできます。これはかなりインパクトがあります。日本国内の場合であれば、労働基準法の第24条の改正がそれに該当するのですが、その点はこちらにまとめています。

労働基準法第24条の改正が仮想通貨・キャッシュレス・フィンテックに与える強烈なインパクト

フェイスブックは、ここにポイントプログラムを検討しているのですが、それは、Orbの電子版藩札でもやっていましたが、割と誰でも思いつくことです。Orbの場合は、シルビオ・ゲゼルの自然減価型地域通貨のアイデアを更に発展させて、チャージ時点で10%や15%の特大ボーナスを提供し、回転率を上げるために、一定期間内に利用しないと減価していくモデルを進めていました。つまり、インセンティブ分の資金回収は、通貨の回転率が上がることによって、地元経済の景気が回復し、先のあげたトランザクションレンディングの手数料(できれば、イスラム金融方式。ダメなら融資金利)で回収するモデルです。これは、今のLINEPayやPayPayのマーケティングモデルにも採用されていますね。詳しく知りたい人はこちらです。(念の為、僕は、B2Cの方が得意な起業家なので、B2BのOrbはSBIさんにお任せすることにし、2018年2月にSBIグループに売却しました。)

これを普及させるとスゴいことがおきます。経済システムから「インフレ」がなくなるのですよ。人類を長年苦しめてきた「インフレ」問題から僕らが解放される。例えば、今のフェイスブックが、Libraを使って、シリコンバレーでこれを仕掛けるととんでもないことがおきます。今、シリコンバレーは、インフラで苦しんでいるのですが、その問題が解決できるからです。間違いなく、シリコンバレーは、世界最強のイノベーションハブとしての地位を不動のものにできるでしょうね。その点はこちらにまとめています。

シリコンバレーの地価高騰がもたらす起業家にとって辛い「思考のゆとりの喪失」

しかしながら、今の一般個人が、ゲゼル・マネーの価値を十分理解して使えるということはまだまだ厳しいと考えているので、その手前段階の仕掛けが重要です。それは何か?「ユーザーがLibraを稼げる仕組み」です。だから、彼らが広告視聴に対してLibraを与えるのはありですよね。しかし、ここからさらに考えなければならないのは「どれぐらいの労働対価で、どれぐらい稼げるか?」なのですよね。

こちらのブログで、シェアリング・エコノミーにおける現状の課題として、UberやLyftで起きているストライキの問題を上げていますが、このような課題が、実は新たなイノベーションを気付かせてくるヒントが眠っているのです。

同じシェアリングエコノミーでもAirbnbでは起きないのにUber・Lyftではストライキが起きるわけ

僕が、「トークンエコノミーはキャピタルゲインがえられるアフィエイトである」と言っている点は、ここに繋がってくるのです。なので、Libraがここをブレイクスルーできるか?例えば、広告視聴の対価に、Libraを与えるというアイデアは良いですが、広告の視聴率を上げるために、また、個人情報を使ったパーソナライズ広告を売ったのでは意味がないですよね。マーク・ザッカーバーグが新たに打ち出した「プライバシーを重視したSNS」という経営方針と矛盾してしまいます。その点はこちらにまとめています。最近、共同創業者のクリス・ヒューズからFBファミリーの分割提案を受けるなど、かなり大変な状況ですから、彼は、この経営方針を貫く必要があります。フェイスブック規模の会社では、朝令暮改はもはや許されないですからね。

フェイスブックの相次ぐ幹部退任から読み取れる、ザッカーバーグ氏が考える新たな方向性の「重さ」

僕が、広告でやるなら、トークンエコノミーと評価経済を使って広告運営の仕組みそのものを非中央集権化します。つまりー、データを活用したパーソナライズを希望するかどうかは、ユーザーの意思に委ねるということです。その点の考えはこちらにまとめています。フェイスブックがもし広告モデルで、これをやりきれれば、Googleを超えられる可能性が出てきます。

トークンエコノミーによるイノベーションのノウハウはウィキペディアにあり

なぜなら、僕は、Googleがいずれトークンエコノミー化することを予測して動いています。その点はこちらにまとめています。フェイスブックのLibraが現実的なものになるほど、この日は近づくと言って良いです。

Googleがトークンエコノミー化する日

ということで、フェイスブックが、ここをどうブレイクスルーしてくるか? に引き続き注目しています。

つづく。

【シリーズ】リブラとは? – Libraに集結する新ペイパル・マフィアたち

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