日本人がこれから追求すべき二つの全く新しいイノベーションのかたち

日本は、残念ながら、かつてのJapan as No.1の時代を取り戻すことは不可能なのですが、まだ多くの人はこの現実を受け入れられていない。どこかに、また、日本からソニーやホンダのような企業が出てくることを期待している。しかし、ミレニアムの世紀において、これが育たない理由は、2つ明確にあります。 理由①人口減少 そう、まず、これですね。以前、人口ピラミッドの話で触れましたが、日本の人口は、すでに減少段階に入っています。ソニーやホンダを実現したような「規模の経済」を追うイノベーションにおいては、この人口の数が一番重要なのですね。本国に膨大なユーザベースを作り上げることができるからこそ、海外市場での競争を戦う上で、本国市場か上がる豊富な利益を使って、中国やアメリカの競合との競争に立ち向かうことができるからです。 しかし、移民を取らない以上、これを増やすことはできない上、日本は国土が狭いですから、広大な国土を有するアメリカや中国、そして、インドに比べて、この時点で対抗できる余地はもはやないのです。詳しくはこちらです。 人口ピラミッド比較からみる次世代の世界の「イノベーション・ハブ」 理由②:社会の多様性のなさ 次に、これが非常に重要です。まず、これも以前にブログで触れましたが、20世紀が「細分化の時代」である一方で、21世紀は「統合化の時代」なのですね。統合化の要素の1つが、「多様性」です。日本のテクノロジーやビジネスがよく「ガラパゴス」と呼ばれるのは、この多様性が社会にないからです。完全、日本人好みになってしまうのです。そして、多様性を社会に与えるには、戦略的な移民を常に一定量、取ることです。 20世紀は「細分化の時代」、21世紀は「統合化の時代」であるとはどういうことか? しかし、今の政治家、官僚、そして政財界のリーダー、そして、学会のリーダーに、これを実行するだけの胆力はありません。なぜか?それは、団塊の世代の雇用を守るために、若者を犠牲にした派遣労働法を作った時点で分かります。アメリカを見ればわかるように、戦略的な移民を通じて、有能な外国人をたくさん日本に連れてこれば、今の自分たちの地位が危うくなるからです。その点は、最近、政府が検討を進めている「外国人の単純労働者受け入れ」の政策を見れば分かります。若者の次は、単純労働者としての外国人をターゲットにしているのですよ。 単純労働者受け入れの移民戦略は、大学教育の改革と平行であれば効果はある② 移民国家をやるということは、アメリカを見ればわかるように、新しく入ってくる様々な人種の文化のみならず政治経済上の公平性を実現するために、彼らを政治経済の中枢に受け入れて行かなければなりません。オバマ大統領もそうして誕生したのです。つまるところ、今の日本人のリーダーの大半がそうであるように英語もできず、外国での生活経験のないような人材ほど、「無用の長物」扱いを受けてしまうのです。今のあなたは、日本生まれ日本育ちの中国人を首相として選ぶ勇気がありますか? 同じような境遇の韓国人や、欧米人を日本の首相として選ぶ勇気がありますか?私は当然あります。アメリカで、トランプ氏が、大統領になった背景には、このような衰退していくアメリカの白人社会層の支持を集めたからです。その点は、こちらにまとめています。 トランプ氏は、なぜアメリカ大統領になることができたか? つまり、1つ目の人口問題とこの社会の多様性は、完全にリンクしている話なのですね。結論として言えることは、このような閉じられた日本社会で、GoogleやWechatがそうであるように、規模の経済を活用したイノベーションを起こしていくことは不可能です。規模の経済のイノベーションには、「莫大な資本」が必要になるからです。正確にいうと、巨大なリスクマネーです。上の2つが欠ける低成長社会に入った今の日本経済では、とてもこれは用意できません。その点は、日米間のリスクマネー格差34倍という話でお伝えしている通りです。詳しくはこちらにまとめています。 シリコンバレーの基本戦略であるフリーミウムモデルに対抗できるのはトークンエコノミーだけである では、どうすればよいのか?僕は2つの答えを持っています。 日本人がこれから追求すべき二つのイノベーション・モデル 1つ目:規模を追わないコア・テクノロジーに絞ること 規模を必要としないイノベーションです。強いて言えば、圧倒的に技術的な差別化が効いているイノベーションですね。たとえば山中教授が発明したiPS細胞を使ったベンチャーなどがよい例と言えます。松尾教授が開拓したAI領域におけるディープラーニングなどもそうですね。僕が開発したブロックチェーンのプラットフォームソフトウェアのOrb DLTもそうです。また、B2Cではなく、B2Bのみです。なぜなら、B2Cは規模の経済が働くからです。この領域では、日本のベンチャーは、中国とアメリカには一生勝てません。このモデルは、すでに雛形があります。このブログでも増えているイスラエルのスタートアップエコシステムです。 イスラエルの起業エコシステムからみる日本市場の中途半端さ 僕は、GoogleのインキュベータープログラムであるLaunch Pad Programのリードメンターをしているのですが、そこで、同じくメンターをしているイスラエル出身の起業家たちと親しくなったのですが、そこで彼らの話を効いたまとめたのが、上の記事です。 分野も絞り、かつ、研究レベルもアメリカや中国の先を行くことで、技術自体を規模の経済が働かないコア・テクノロジー領域に絞りこむことで、徹底的に差別化しています。その上で、事業として成立させる市場として、中国とアメリカをターゲットします。ですから、資金調達についても、国内ではシリーズAまでしかサポートせず、シリーズB以降は、日本市場は完全に無視して、中国、アメリカ、インドなど圧倒的に大きな市場規模のマーケットで成長させるという事業戦略です。つまるところ、日本は、事業をインキュベーションをするための「テスト市場」とみなすということですね。   コア・テクノロジーになるほど、参入障壁が高くなるため、競合が生まれにくくなり、かつ、B2CでなくB2Bに絞ることで、アメリカや中国のベンチャーが仕掛けてくるフリーミウム戦略による「ネットワーク効果」の影響が受けにくい市場になります。B2Bは基本、営業とパートナーシップで顧客を得ていくことができる事業開発モデルなので、顧客のスイッチングコスト(=競合が、自分の顧客を奪うために支払う営業やマーケティングコスト)を意図的に高くすることができるからです。B2Bといっても、いわゆるSaaSに代表されるように中小企業向けの製品は、B2C市場と顧客獲得のモデルが全く一緒なので対象外です。 実は、Orbのときも、これを狙って、地銀や地元有力企業を開拓していたのですよ。将来的に、外資系が入ってきても、地方市場まで彼らの手が伸びてくるのは時間的にかなり先になるのが当然だからです。その間に、顧客とビジネスを立ち上げてきれば、生存確率が上がります。戦略とは、このように非常に緻密に考え抜くことから作り上げていくものです。司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を読めばわかるように、「明治日本」にはこの頭脳がありました。しかし、「昭和・平成の日本」には全くこれはなくなってしまいましたね。「坂の上の雲」は、若者が絶対に読んだ方がよい歴史小説です。参考リンクをつけておきます。 坂の上の雲 一 posted with ヨメレバ 司馬 遼太郎 文藝春秋 1999年01月08日 楽天ブックス 楽天kobo Amazon Kindle 7net 2つ目:ビットコインモデル もう1つは、そう、ビットコインと同じモデルです。どういう意味で言っているのか?一言でいえば、「タダでイノベーションを起こす」ということです。笑 要するに、「組織」を作らずにイノベーションを起こすということですね。組織を作った時点で、社員を雇う必要があり、すると、人件費が払う必要がある。実は、株式会社などを組織してやる世界では当たり前のスタートアップモデル、日本がやっている時点で、中国やアメリカのスタートアップには絶対に勝てないのですよ。なぜなら、人件費が一番コストがかさむので、結局、「資本力の勝負」になってしまうからです。資本力の勝負になった瞬間、日本社会から立ち上がるスタートアップは、アメリカや中国のスタートアップに対して「竹槍で戦車に挑む」戦いをすることになります。 しかし、ビットコインのイノベーションモデルは、これとは全く違います。以前からこのブログで話をしているように、サトシナカモトという架空の人物を作り出してビットコインを世に送り出した金子勇氏は、一人でビットコインを実装したのですよ。しかも、このソフトウェアがあまりにも革新的だったので、エンジニアのみならず、様々な人材を惹きつけ、彼らが自発的に紹介動画を作ったり、財団を立ち上げたり、取引所を作って、世界へと広まって行った。そして、パーソナル・コンピュータ、インターネットに次ぐ、第三のIT革命であるブロックチェーンをこの世にもたらしたのです。僕は、ビットコインが、ソフトウェアとして素晴らしいというだけでなく、イノベーションの起こし方が素晴らしいと考えています。 僕がWinny開発者「金子勇」氏がビットコイン開発者「サトシナカモト」であると確信している理由 そう、「組織を作らずにイノベーションを起こす」。これこそが、僕は、日本人が追求すべきこれからのイノベーションの形であると考えます。しかし、金子勇氏のような天才であれば、一人で実装しきれますが、僕も含め大半の人はそうも行きません。なので、いわゆる「副業」モデルになるというわけです。報酬は、ビットコインがそうであるように、そのソフトウェアを支える仮想通貨になるわけです。このモデルの強みは、タダであるということも当然ですが、もう1つの強みは、「母体がないので国家が規制しようながないこと」です。 GAFAが、創業者達の意に反して、アメリカ政府の傘下に入ってしまったのは、「組織」がそこにあるからです。GAFAについては、こちらにまとめています。 GAFAの脅威とブロックチェーンの可能性 しかし、ビットコインは、母体がないので規制しようがない。これこそ、ポスト資本主義の模範を世界に示すべき日本人が目指すイノベーションのかたちであると考えています。