バイナンスがプロダクト戦略の主軸を「裏方」に切り替えることで、この業界は更に発展する。なぜか? #1

最近、バイナンスが、US市場にすでに現地ライセンスを持っているBAM社とのパートナーシップの締結のニュースを出しつつ、その数日後に、アメリカ居住者に90日後にBinance.comへのアクセスを不可にする措置(当然、アメリカ政府からの要請による)を取る発表をみて、思うところをまとめておきます。

バイナンスのUS市場進出にあたってのBAMとのパートナーシップ記事のプレス(英語)はこちら

1.今後の取引所事業の中核は間違いなく、Crypto to Crypto(仮想通貨間取引)である

まず、僕が以前から伝えているトークンエコノミーのメカニズムが普及していくほど、仮想通貨・暗号資産の市場がどんどん大きくなるため、取引の中心は、2017年に主流だった法廷通貨(例:日本円)から仮想通貨に投資するという現金・仮想通貨間の取引の動きよりも、仮想通貨から他の仮想通貨に交換する動きの方が主流になっていきます。そもそもバイナンスの成功自体も、そのCrypto to Cryptoのトレンドに乗って、世界最大の取引所に成長した経緯があります。その点はこちらにまとめています。

僕がなぜBinance(バイナンス)のBNBトークンに投資するのか? #1

なぜなら、トークンを無償で稼げるからです。今、インターネットで、Youtuberやインスタグラマー、アフィリエイトブロガーが、広告で収入を得ていると同じように、トークンエコノミーが組み込まれた、ウェブサービスやゲームをやることで、同じように収入を得られる世界が出来上がっていきます。その点については、詳しくはこちらにまとめています。

トークンエコノミーとは、キャピタルゲインを得られるアフィリエイトである

そして、すると、現金から仮想通貨に投資するという行為を行うのは、廃れていきます。正直、ビットコインぐらいで十分です。なぜなら、ビットコインが、この市場に資金を流し込むデジタルゴールドの機能を持っているからですね。詳しくはこちらにまとめています。

僕の仮想通貨(暗号資産・トークン)投資のポートフォリオ戦略の基本的な考え方についてまとめ #1

しかし、課題は、各国の規制なんですね。これを次にお話します。

2.Fiat to Cryptoの市場は規制のかたまりでローカライズコストが高い

今回のBinance.comのUSからアクセス禁止は、間違いなく米国政府からの要請です。理由は想像がつくのですが、「アメリカ政府や州政府が作った取引所の規制ルールに準拠していない取引所を米国人に使わせることは、承知できない」というものです。その最低条件は、間違いなくアメリカに法人を構え、そこで人を雇い、オペレーションすることですね。Binanceがこれを受けるというのは、事業戦略上、かなり大きな新しいリスクを取ることになります。それは、日本国内も含めて、世界のFiat to Cryptoの取引所の現状を見ればわかります。海外に出て行くのがものすごく大変なんですね。

僕が、Orbを立ち上げるとほぼ同時に、共同創業者の妹尾さんと動いて、BitflyerやKrakenに声をかけてJBAを作った背景はまさにここなのですが、金融市場は、世界一規制の多い業界なのですよ。なぜか?税金と、そして自国通貨の信用と直結するからです。税金は政府の収入です。当然、死守しますよね。その上、自国通貨の信用が傾けば政府にとっては一大事です。

だから、仮想通貨・暗号資産のような、国家経済システムに相対する全く新しい金融インフラを世の中に定着させるには、早い段階からロビー活動をして、市場発展の障害になる動きが政府側に出ないように動いていく必要があるのですね。2017年まで、なぜ、日本の仮想通貨業界が、あれだけ世界から注目を集めたか?と言えば、僕の金融庁委員会での委員活動も含めて、この民間のロビー活動が功を奏していたからです。

しかし、バイナンスが、世界中の市場で、毎度これをやるのはかなり大変です。彼らの成長スピードにも足かせになりますし、相当大きな組織が必要になります。これでは、CEOのCZが貫いている少数精鋭の分散型組織による経営を維持するのも不可能になるでしょう。色々な経営路線の変更が必要になる。正直、業界全体の発展を考えるならば、バイナンスがその経営判断を下すのは理想的ではないと僕は考えています。

また、僕の直感では、今回のG20での動きもそうですが、今後、国家経済システムは、「国益」につながるよう自国内のプレイヤーを保護する動きを取ると見ています。その方が、国にとっては儲かるからです。となると、適切な戦略としては、現地のパートナーとくみ、政府対応はローカルパートナーに任せて、自らは裏方として、世界中のCrypto to Crypto の流動性を引き上げる方に動いた方が、業界発展に繋がると考えています。

技術に詳しくない人のために、少し図で補足すると以下のような事業体制をとるということです。


僕らが普段見ているバイナンスの画面は、表側のシステムで、裏側のシステムが、僕がここに書いている「Binance DEX System」ですね。専門的な言い方をすると、前者が、フロントエンドシステム、後者がバックエンドシステムです。後者のシステムが見ているのは、アカウントの管理や注文の管理、売買処理などです。システム的には、こちらの方が圧倒的に重要です。ここが落ちたらシステム止まりますからね。表側のシステムの方が技術力の要求レベルは低いです。なので、表側のパートナーは、むしろ現地政府との調整やカスタマーサポートが業務の中心になるでしょう。こんな具合です。

実際、これが実現するとどうなるか?

3. 今とは比べ物にならないユーザーベースをバイナンスは手に入れることができる

まず、ここですね。今では、英語の問題などもあり、バイナンスの会員登録をするのを避けていた日本人も多くいると思いますが、この問題はローカルパートナーによって解消されます。すると、世界中のユーザーを裏方として束ねることになるので、ユーザーベースはさらに拡張することができるとみています。

4. トークン上場を目指すスタートアップにとってはこの上なく助かること。IRコストと規制対応コストが下げられる。

どういうことか?ブロックチェーン業界は、インターネットの時代よりもはるかに物事が世界同時進行でおきています。これはインターネットが普及しているからですね。世界がインターネットという共通のメディアでつながっているから、情報の伝達スピードもインターネット黎明期の20年前と比べたら爆発的に加速しているのです。ですから、ブロックチェーンのアプリなども、当然、英語でリリースすれば、世界中にユーザーベースを短期間に作ることができます。これは、LinoNetworkが手がけるD-Liveに参加するユーザーの動きをみていても思うことです。インターネット市場よりも、世界ベースでユーザが育って行っています。

インターネットのスタートアップではよく「常にグローバルでものを考えて、ローカルで行動せよ」ということを言うのですが、仮想通貨やブロックチェーン市場では、これが100%は当てはまっていない体感があります。

このような流れにこの業界全体が動いている中、トークンを稼いだユーザーがそのトークンを売却した場合に、当然、そのトークンが取引所に上場されており、かつ十分な流動性がなくてはなりません。そうでないと、稼いだトークンを売れないからです。そして、このトークンを取引所に上場させることを目指しているベンチャーにとって、各国の取引所ごとに上場させる作業を進めるは、相当な労力が必要です。

しかし、バイナンスがこの戦略を中核においてくれれば、スタートアップ側は、バイナンスでさえ上場できればOKという市場が環境を作ることができます。これは、かなり、スタートアップにとっては助かります。IRコストとは、投資家対応コストのことです。トークンエコノミーの世界では、ユーザー=投資家の方針を貫きます。

当然、新たなトークンをバイナンスに上場させる場合、各ローカルパートナーは、地元政府との色々な交渉や調整をすることになりますが、人気のトークンを上場させるほど、彼らもリターンが得られます。アメリカであれば、CoinbaseやGEMINIなど本国内の取引所との差別化になるからです。繰り返しますが、取引所事業の成長の鍵は、Crypto to Cryptoなんですよ。だから、Goサインが出た国のローカルパートナーから順次取引可能になるというような流れになると見ています。

そして、これはバイナンスのトークンエコノミーを更に強化できると考えています。

つづく。

バイナンスがプロダクト戦略の主軸を「裏方」に切り替えることで、この業界は更に発展する。なぜか? #2

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