「音楽は10年以内に消える」、シリコンバレーのトップVCの予言は的中するか?

Photo by Franck V. on Unsplash

僕が、シリコンバレーでベンチャーをやっていたときに、シリコンバレーのインナーサークルの中で、唯一名刺をもらい、プレゼンさせてもらったことがあるのがビノット・コースラ、彼が、Business Insiderで最近、とても興味深い発言をしています。

まず、記事の要点は下記の通りです。

  • 最近は、特定のアーティストやバンドの曲を選んで聞くより、Spotifyなどが提供する気分に合わせたプレイリストを聞くユーザーが増えている。
  • この結果、今後10年で音楽を聞く人はいなくなるだろう。代わりにユーザーの気分に合わせたカスタムソングのようなものを聴くようになるだろう。
  • そのような音楽は、今後、AIによって作られるだろう。

原文記事はこちらです。

実感としても納得感のある話なのですね。まず、ビノット・コースラについて知った方が良いと思います。彼は、シリコンバレーのインナーサークルの中で、レジェンドと言われるクラスの元起業家であり、5,000億のVCファンド、コスーラ・ベンチャーズの創業者兼パートナーです。

From Wikipedia – ビノッド・コースラ(ヒンディー語: विनोद खोसला, 英語: Vinod Khosla, 1955年1月28日 – )は、インド・プネー生まれのベンチャーキャピタリスト。1979年にスタンフォード大学を卒業後、1982年に同窓生だったスコット・マクネリ、アンディ・ベクトルシャイム、そしてカリフォルニア大学バークレー校で修士号を取得したビル・ジョイらとともにサン・マイクロシステムズ社を設立。1984年まで最高経営責任者を務め、1985年に退社した。2004年には自身のベンチャーキャピタルである Khosla Ventures を設立。ベンチャーキャピタリストとして数々の企業の設立に携わっている。また、コースラはシリコンバレーにあるインド人起業家支援組織の The Indus Entrepreneurs の設立者の一人であり、インドのビジネス新聞 Economic Times の編集者でもあった。

彼が設立したサンは、2008年にはオラクルに7400億円で買収されており、これはオラクルの歴史上最高額の買収です。これ以外のエピソードでいうと、TwitterやSquareを作ったジャック・ドージーは、ビノットの指導で経営者として成長することができたと言われています。ビノットが、Squareの初期の投資家だったのですね。これもあり、ジャック・ドーシーは、一度、TwitterのCEOをクビになったのですが、ジョブズのように再び、TwitterのCEOに返り咲くことができと言われています。起業家の指導力は抜群と言われています。

シリコンバレーでは、インド人の活躍は目覚ましく、現Google CEOのサンダー・ピチャイや、元Google CBOで、一時、孫さんがソフトバンクの後継者にすえたニケシュ氏もインド人ですね。これらのインド人のシリコンバレーでの活躍の土台を作ったのが、ビノット・コースラと言われています。

彼クラスになると、だいたい10年ぐらい先をみて、今の行動を取っているので、このような発言が出てくるのは全然不思議なことではないです。何より、僕も共感する面が多いので、考えをまとめておこうと思います。

まず、僕は、「音楽」は、3つの要素からなると考えています。

 

  • 音楽を聴く
  • 音楽を観る
  • 音楽を体験する

音楽を聴くは、記事にある通り、SpotifyやiTunes Musicなどで楽曲を聴く世界ですね。そして、音楽を観るとは、YoutubeなどでMusic PVを観ることです。音楽にあった動画シーンがあることで、聴くに比べるとよりユーザーはその音楽の世界に入り込みます。ホームパーティをしているときなどに、楽曲PVを流したりする感じですね。そして、最後が、音楽を体験する。これは、「コンサート」や「ライブ」「クラブ」の世界ですね。この世界は、ほぼファンコミュニティの世界と言えます。そのアーティストの人格やその人たちが作り出す世界観にどっぷり浸かりたいという欲求の世界ですね。

このうち、一番、特定のアーティストや楽曲にエンゲージメント(ロイヤリティと言ってもいい)が浅く音楽を楽しむ世界は、「音楽を聴く」という世界です。こうなる最大の原因は、3つの音楽を体験するに比べると、ユーザー側に主導権があるというのが大きいと思います。今の自分の気分を主体に聴く音楽を選ぶからですね。

確かにそうなると、3つ目の体験で生み出されていく楽曲の世界観とバッティングしてしまうことがありますよね。たとえば、ドライブ中に聴く音楽。ドライブと言っても、様々なシーンがあるわけです。南国のビーチで、オープンカーに乗りながら。秋の紅葉の山道をドライブ。夜の高速をドライブなどなど。Siriなどを使って、希望のキーワードをいくつか伝えれば、そのシーンや気分に合わせた選曲をしてくれる。ただ、そこに、もはやユーザーの特定アーティストへの関心はほとんどないという世界です。

いわゆるリミックスのように、それぞれのドライブシーンに合わせて、過去の楽曲パターンを組み合わせた曲をその場でAIが即席で作っていく。どういう音の組み合わせが人の耳に聴き心地がよいか、または、どのような感情のときに、それはユーザーが言葉でインプットしてもらうことなるとなると思いますが、どのようなタイプの音楽が共感を呼ぶのかは、ディープラーニングなどのAIテクノロジーを使えば、パターン学習が十分可能ですから、全然実現できてしまうということです。

だから、彼のいうように、聴くための音楽を作曲するという世界は、アーティストにしてみると、あまり面白くないわけです。では、2番目の「音楽を観る」はどうか? これを考えるとカラオケで流れてくるバックグラウンド映像を思い出しますが、これもAIを使って、CGで表現してもいいわけですね。別に人を出さなくてもよい。PVは、楽曲と動画が融合された世界観なので、聴くに比べると、よりその楽曲の世界観に入り込むような感じです。ただ、利用シーンとしては、ホームパーティをしているときなどが多く、PVを能動的に観ようとすることはそれほどない。となると、ここもAIを使って、気分やホームパーティにくる人のテイストに合わせたPVを流す方が最適な選曲ができることになる。

先ほどの話にあったように、楽曲をAIで自動で作れてしまうわけですから、PVの映像など当然のごとくですね。過去の動画パターンを切りはりすることで新しいPVを作っていくわけです。

では、最後の「音楽を体験する」は世界はどうか?コンサートやライブの世界は、ユーザーに主導権はなく、アーティストの世界観にどっぷりユーザーが入っていく世界です。だから、ここはAIには容易ではない。ヒューマニティ(人間性)が醸し出す独特のニュアンスがそこにあるからですね。これはその人の人格そのものといっていい。また、ライブならではの不測の出来事などもあり、これも1つの体験となる。ただ、ファンの一人が目の前であまりの興奮に気絶してしまって、それをみんなで助けるや、アーティストがファンウェーブの上にダイブするなど。だから、ここはコンピュータがどうこうするような世界観ではないが故のよさが十分あるわけです。

以前にも、このブログで触れていますが、今の音楽コンテンツ業界で、一番収益をあげているのは、ライブビジネスですね。アメリカのLive Nation社が非常に好調なのが、その裏付けです。詳しくはこちらにまとめています。

日本の音楽業界のIT化の遅れは間違いなくアーティストを食えなくする

なので、僕もコースラの未来予測には同感です。「聴く」だけの音楽と「観る」だけの音楽は、AI化が進むでしょう。しかし、そうなると考えなくてはならないのが、ではアーティストは、どうやって3つ目のライブなどでビジネスとして成立させるためのファンを得ていくか?ということですね。

上の2つの手法はAIに置き換えられていくと想定すると、ファン獲得の入り口としては、視野に入れてもあまり意味がなくなっていくということです。早いところ、別の有効な手段を見出した方がいい。

僕の感覚では、「口コミ」がキーだと考えています。感動するライブイベントを提供し、そこで生まれたファンが周りの友人を新たなファンとして連れてきてくれるメカニズムですね。サマーソニックなど、ミュージックフェスは、そういった意味で新しく出てくるアーティスト達にとっては、将来のファンに自分たちを発見してもらう最高の場の1つだと思います。

親しい友人にシンガーソングライターもいますので、彼女などに何か助け舟を出せればと考えています。

 

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