マスター・オブ・スケール – Google前CEO エリック・シュミットのインタビュー#8


ホフマン:ボトムアップ型のアイデアを発明していくアプローチと、フォーカスしたトップダウン型の意思決定のアプローチのコンビニネーションが、過去16年のGoogleの成長を牽引してきた。しかし、その二つのパワーは、全く問題なく共存してきたわけじゃない。エリックは、組織内をアイデアが流通するように、いくつかの過激な方法も取った。これは、エンジニアたちに自由を与え、できる限りマネジメントを排除するような取り組みだ。たとえば、プロダクトリーダーは、彼らの与えられたプロジェクトに対して、エンジニアを説得することができれば、何人でもメンバーに引き入れていいことにしていた。

これについては、僕は、Googleの他のマネージャに、この件について話を聞いたのだけど、かなりフラストレーションを感じていて、こう反論していた:”僕は、自分が受け持っているプロジェクトが戦略的なものであるとお互いに合意している。ついては、何人かのエンジニアを君のチームから僕のチームにアサインしてくれないか?”と。すると答えはいつもこうだ。”Noだ。君は、そのエンジニアを実際に説得しなければならない。もちろん、全エンジニアを説得しても巻き込んでもいいんだよ。” そして、これこそ、物事を進める上でのGoogleのカルチャーのコアなんだよ。

エリックは、さらにこのアイデアを一歩進めた。彼は、社員に、自分のプロジェクトを選ぶ自由を与えるだけでなく、彼らのマネージャにためらいなく楯突ける自由も与えた。よく知られたことだけど、Googleには全社員が、仕事目標のうち、20%は自分の好きなことに割り当てることができるようにしている。これは、Googleの大学院文化の論理的な拡張なんだ。大学院のリサーチアドバイザーに当たるマネージャは、実験に対して、スケジュールと予算を設定することができる。しかし、生徒であるスタッフは、そのリサーチのアジェンダを自由に選ぶことができる。

シュミット:その20%ルールから、本当にたくさんの素晴らしいアイデアが生まれてきたんだ。Google Mapに関するものや、検索エンジンに関するもの、広告事業や、AI、それ以外にも全く新しい分野に取り組んだ中からも新しいアイデアが生まれてきた。

ホフマン:エリックが言ったように、みんなも知っている、Gmail、GoogleMaps、GoogleNews、GoogleAdSense、これら全てのアイデアが、社員から出てきたものであり、かつ、その20%ルールの中から生まれたものなんだ。しかし、なぜ、それが機能するのか?

シュミット:その20%が本当になんでもやっていいと言っている一方で、コンピューターサイエンティストやエンジニアである彼らは、自分たちが取り組んでいるビジネスから極端に方針転換するようなことは考えたりはしない。それが、この20%ルールの真髄なんだ。

ホフマン:生産性の高い社員のこの20%ルールの生産的な使い方というのは、このプログラムの成功例として、先に話をした例がいいように、よくまとめられている。しかし、そこにはまだ隠された本質があるんだ。それは、不合理なマネージャに対して、合理的な社員が抵抗できるという手段でもあるということ。この組織的に反抗できる仕組みは、権力が極端に強くならないようにする効果をもたらす。だから、生産性の高いエンジニアは、たとえ本業の仕事が辛い時期でも、モティベーション高く仕事に取り組むことができる。

シュミット:だから、20%ルールの興味深い点は、”君は1日を自由に使っていいんだよ”といいながらも、その20%ルールで設定したテーマについて、開発マネジメントにおける権力のバランスチェック機能を持っているんだ。だから、もし、ある社員がプレッシャーを感じていたら、つまり、その上司が “もっと頑張れ、君の持っているパワーを全て僕に投じろ”ときたら、その社員は、そのボスに面と向かって、”僕は、あなたに、僕の100%のうちの80%のあげますよ”と答えることができる。このとてもシンプルな原則は、社員に尊厳と同時に選択も与えているんだ。

つづく。

マスター・オブ・スケール – Google前CEO エリック・シュミットのインタビュー#9

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