CyberMilesにみるEC市場へのブロックチェーンスタートアップの市場参入戦略について #1

僕のTwitterのフォロワーさんからのリクエストがあったので、僕の見解をまとめておきます。

CyberMiles社は、香港に拠点をおく、Eコマース向けのBaaSを提供するブロックチェーンベンチャーですね。CMTというトークンも発行しています。バイナンスにも上場されています。

CyberMiles社

まず、僕は、ブロックチェーンスタートアップが、シェアリングエコノミーも含めた本格的なEC事業に参入するのは、まだ時期尚早だと考えています。どうしても今のタイミングでスタートを切りたいなら、かなりニッチなサービスから入って本格的なスケールのタイミングを待つという展開になるでしょう。なぜか?

Eコマース事業の基本

まず、僕はEコマース事業をやっていたのでよくわかるのですが、今、これだけ様々なEC事業で登場している中で基本として抑えておくべきポイントがあります。

  • 1.商材が他のEコマースでは手に入らないユニークかつ価値あるもの
  • 2.扱っている商品の平均価格帯が購入ハードルが比較的低い単価であること
  • 3.物流システムで、コスト構造もしくは配達スピードでアドバンテッジを持っていること

ブロックチェーンやトークンエコノミーについて云々する前に、上の3つのうち、最低2つを抑えていないと、アマゾン、楽天、ヤフーなど、豊富な商材と優れた物流システムをもつプレイヤーがこれだけいるEコマース市場で、新しいスタートアップが勝つ見込みはまずありません。特に重要なのは、1つ目ですね。商材が他で売っていない価値あるものであれば、2や3が欠けていても多少はなんとかなります。逆に3を初めから手に入れるのは至難の技です。国内であれば、ヤマトや佐川もいますからね。

CyberMilesの場合は、自分達が実際に、Eコマース事業をやるわけではなく、B2BでBaaSを提供しているわけですが、上にあげた問題に変化はありません。なぜなら、CyberMilesを使うお客さんが、上にあげた競合と戦うからですね。要するに、結果的には、CyberMilesは、B2B2Cのビジネスをやっています。BaaSの観点から言えば、国内であれば、Baseや、海外ならShopify、Magentoなど、スモールEC事業を行うための同じようなクラウドサービスがすでに市場でいます。ブロックチェーンを使う決定的な理由が必要です。

僕が、時期尚早と言っている点はまさにそこで、たとえば、トークンエコノミー版YoutubeのD-liveや、トークンエコノミー版RedditのSteemitなどのネットメディア事業に比べて、Eコマースでの参入ハードルは高いのですよ。D-liveはこちらにまとめています。

世界No.1 YoutuberのPewDiePie(ピューディーパイ)が仮想通貨版YoutubeのD-Liveと専属契約する業界インパクトの大きさ

つまり、上記のような要素を加味したかなり差別化したプロダクトでないと全く相手にされない。その上で、かつ、新しいEコマース事業のトレンドに乗る必要があります。例えば、メルカリがやったことは、「スマホのフリマアプリ」です。すでにヤフーオークションという巨大な競合はいましたが、それはPCでのこと。ヤフーは図体が大きくなりすぎて意思決定が遅く、スマホへの事業リソースの最適化にものすごく時間がかかっていました。その隙間のチャンスの中でメルカリは市場を獲得するチャンスを得たわけですね。商材については、中古ですから、1と2の二つの条件を満たしやすく、更に、カテゴリはアパレルから立ち上げることで、売り手は東京(アパレルの商品と種類が豊富)、買い手は地方(アパレルの商品と種類が少ない。しまむらとユニクロぐらいしかない。)に定義することで立ち上げていったわけです。

参考までに、破壊的なイノベーション、世の中にまだないものを作ることを重視するシリコンバレーですと、メルカリのような事業は「eBayがもうあるだろ。どこが革新的なんだ」と評価され、市場に存在してないシェアリングエコノミーを作っているUberやAirbnbに比べると、なかなか人気や資金を得るのは難しいのですが、日本国内であれば、VCの目線がそこまで厳しくないので、勝負できるわけです。逆に、日本のVCは破壊的テクノロジーやプロダクトの評価をするのがすごく苦手です。起業家を目指している人は、この点に注意しましょう。

D2Cという新しいEコマースのトレンド

そういう中で、新たなトレンドとしてシリコンバレーで生まれつつあるのが、「D2C」(ダイレクト2カスタマー)の市場ですね。もはや、Amazonなどの大手サイトを通さず、直接、顧客にプロダクトを売る。ただ、当然、そこには、やはり、先ほどあげた3つの条件のどれかで突き抜けている必要がありわけです。

たとえば、最近のD2Cの流れで、僕は注目しているのは「NTWRK」というスタートアップです。

NTWRK

NTWRKはモバイル経由でグッズ販売とコンテンツ配信を行う企業で、ミレニアル世代やZ世代を主要ターゲットにしています。人気ラッパーのドレイクと、アメリカ最大のライブ事業会社で有名アーティストを多数抱えるライブネーション社から出資を受けました。ライブネーション社は、以前、こちらの記事でも取り上げたアメリカでとても成長している会社ですね。

日本の音楽業界のIT化の遅れは間違いなくアーティストを食えなくする

NTWRKは、ある種インフルエンサービジネスとも言えるもので、スマホアプリのみで、そこでアーティストの限定グッズしか売らず、また、グッズの購入頻度や額に応じて、コンサートの予約優待や、バックステージパスなどを提供する。つまり、本当にエンゲージメントの深いユーザーほど、得をするスマホEコマース事業を作ろうとしているわけです。

このようなEコマースは、Amazonや楽天のようなモール事業では、なかなかできないわけですね。なぜなら、楽天やAmazonのフォーカスは「豊富な品揃え」と「優れた物流」にあるので、NTWRKとは、Eコマースに対する思想が根本的に違う。だから、NTWRKは先にあげた3つのうち、1つ目で徹底的な差別化が効いているわけです。そして、あとは、2点目にあげている、そこで売る商品の単価をミレニアムやZ世代の平均所得レベルにあった単価レベルに設定してあげれば、そのアーティストを好きなファンたちのトラフィックが生まれるわけです。

つづく。

CyberMilesにみるEC市場へのブロックチェーンスタートアップの市場参入戦略について #2

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