【初心者向け】イーサリウムとリブラのBaaS比較 #2

 

アセットフォーカス VS ペイメントフォーカス

次にBaaSとしてのブロックチェーン・アプリケーションの特徴から見ると、暗号資産としての性質が強いETHと、ステーブルコインとしてのリブラの間に、dApps開発におけるユースケースの違いが大きく出てくると見ています。まず、ステーブルコインをもつLibraの最大の強みは、ブロックチェーンが目指している、世界30億人もの銀行を持たないアンバンクユーザーの「信用格差の解消」のために、彼らの大半が住む通貨システムが非常に不安定な新興国へ、そのまま市場参入ができることです。新興国の通貨のボラティリティが、仮想通貨かそれ以上に高いためです。信用格差の解消がなぜ重要かについてはこちらにまとめています。

情報格差の解消 + 信用格差の解消 = 経済格差の解消 → 奉仕経済の普及とは?#1

また、そのような国の一部では、自国通貨は放棄し、代わりにUSドルを使うケースも多々見られます。この点が、リブラが、基軸通貨ドルに取って変わる存在になるという議論につながってくるわけですが、その点は、FRBのバーナンキ議長のコメントが興味深く、別途、こちらにまとめています。

FRBパウエル議長とトランプ大統領の発言から読み取く基軸通貨ドルの放棄とビットコインの台頭 #1

もちろん、Libraを利用するためのスマートフォンが同時普及して行かないと実現しませんが、リブラのホワイトペーパーには、「40ドルのスマートフォンを提供すればアンバンクユーザーを救える」という記載があるため、バリーデーターであるリブラ会員が、その点のコスト負担をして実現していくと見ていますが、アフリカで成功しているケニア発の電子マネー・エムペサに代表されるよう、それほどハードルが高いプロジェクトとは見ていません。そのために、ボーダフォンなど通信キャリアもリブラのパートナーとしてすでに組み入れています。

一方、イーサリウムは、アセットフォーカスです。ETH自体のボラティリティが高いためでもあります。彼らが推進しているDeFi(Decentralized Finance)もそうですが、ETHを暗号資産として捉え、これを担保にしたファイナンス事業を通じて、同じくアンバンクユーザーの救済を進めようとしています。有力なプロダクトの一つは、BlockFiに代表されるよう、僕らが彼らに預けるBTCやETHが、マイクロレンディングの原資となって、アンバンクユーザーに「低金利融資」されていくモデルですね。いわゆるイスラム金融です。

アンバンクユーザーの大半は、日本の消費金融よりも劣悪な、年利30%以上のローンなどを組まされ、友人や家族などと連帯保証させることで、高いデフォルト率であっても金利収入だけで莫大な利益が得られるローン事業会社から搾取されています。日本における社畜の搾取レベルとは桁が違うのですよ。それ以外の選択肢がアンバンクユーザーにないため、商売を始めるためのオートバイや機材を購入するために、このようなローンを活用せざるを得ない環境があります。ですから、彼らのようなプレイヤーがどれだけ早く新興国に入って行けるかがカギになります。

BlockFiについては、詳しくはこちらにまとめています。

ビットコインやイーサリウムの長期投資の保有者はBlockFiに預けて増やすのが上策

しかし、彼らが、アセットフォーカスで進めていくなら、ETHが今のインフレモデルのままでは、その威力を発揮するのは厳しいでしょう。ビットコイン同様に供給制限モデルにならなければ、日本円やドルに対するアセット価値が上がりにくいためですね。その点は、こちらにまとめています。

トークン供給制限型のBaaSの可能性について

ただ、リブラのステーブルコインや、BlockFiのようなマイクロレンディングを普及させたとしても、アンバンクユーザーが抱える「信用格差」の問題を完全に救済できるわけではありません。非中央集権的な評価経済の導入が必要です。単純なアプローチは、中国で普及しているWeChat PayやAliPayのトラストスコアモデルをブロックチェーンを使って非中央集権的に運用するモデルをアンバンクドユーザーにも普及させていく手法があります。これがどういうものかを知りたい人は、日本では、LINEやYahoo!が同じものを作ろうとしているので、使ってみるとよいでしょう。詳しくはこちらにまとめています。

【最新版】LINEのトークンLINKの分析 #3 – 評価経済「LINEスコア」の展望

「Yahoo!スコア」が、ブロックチェーン上で運用される日はくるのか? #1

リブラは、WeChat PayやAliPayのトラストスコアモデルをかなり意識しているとみています。フェイスブックをはじめ大企業がリブラ会員に多いため、このような力技のプロダクトを優位に仕掛けることができるからです。その点は、こちらにまとめています。

【シリーズ】リブラとは? – Libraの優れたバリデーター戦略について #2

しかし、今のこれらのトラストスコアモデルでは、この背後で動くアルゴリズム自体が、信用格差を招く可能性が高いわけですね。それは、僕が「シンギュラリティの罠」と呼んでいる問題点であり、MITメディアラボのJOIさんが鋭い指摘をされているので、こちらにまとめています。

JOIさんが指摘する「アルゴリズムが増長する経済格差」 – シンギュラリティの罠とは? #1

なので、これらの問題点を総合的な解決できるdAppsが必要になってくるわけですが、その答えはまだ両者とも持っていないように思います。

イーサリウムとリブラのレギュレーションコストの比較

最後にレギュレーションコスト(規制対応コスト)ですね。圧倒的に高いのはリブラの方です。当然と言えば当然ですが、バリーデーターを事業戦略やプロダクト戦略に合わせて、大手の営利企業を選定しているからですね。政府からすると規制しやすいのです。公聴会に呼んでヒアリングもできますし、場合によっては、リブラ自体をコントロールするために、新たな法案を作り、その企業自体に規制をかけることができます。このあたりは、マーク・ザッカーバーグ、シェリル・サンドバーグ、ピーターティールの3者が重要な役割を果たすでしょう。シェリルは、元米国の財務省出身であり、ピーターはリバタリアンでありながら、トランプ大統領の選挙戦に多額の寄付を行い、政権の人材選定にも関わっている人物です。詳しくはこちらにまとめています。

【シリーズ】リブラとは? – 僕の事前予測とホワイトペーパーとの差分ほぼなし

一方、イーサリウムは、ビットコイン並みに非中央集権化されたプロジェクトであり、先にあげたようにネットワークもパブリックブロックチェーンです。イーサリウム財団も、イーサリウムのソフトウェア開発そのものの方針は決めているわけではなく、その方針は開発コミュニティに委ねられており、その上で作られていくdAppsやDefiに始まる新たなソリューションも、自立的に立ち上がっています。つまり、規制コストはほとんどかからないわけですね。

今、ビットコインが、Bakktが現物先物を上場に向けて動いていたり、複数の資産運用会社が、現物のETFをSEC(米証券取引委員会)へ承認申請を行っているわけですが、それが実現したのちは、対象がETHにも拡張して行くと見ています。ですから、イーサリウムがLibra BaaSとの競合関係の中でも、プロダクト面で意識すべきは、ETHの供給制限モデルの導入、PlasmaCashの実装になると見ています。

以上になります。

みなさんの参考になれば幸いです!

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