【シリーズ】リブラとは? – Libraが「外貨ETF」として規制されてしまうと全然スケールしない。なぜか?

リブラが「外貨ETF」として定義されるかもしれないという議論がにわかに巻き起こっているので、僕の見解をまとめておきます。

外貨ETFとは、他国の国家経済に投資する金融商品

まず、簡単に外貨ETFについてお話します。例えば、日本に住んでいるAさんが、アメリカのドルの外貨ETFを購入するとはどういうことか?というと、そのときの、1ドル=100円として、100万円のETFを購入する。この資金は、単に、アメリカのドルに交換されるだけでなく、そこでさらにアメリカの3-5年満期の短期米国債などで運用されたります。ETF商品別にリスクのランクが別れており、高いリスクを持った外貨ETFの場合、その国の成長株の株式や社債に投資されることもあります。

短期米国債で運用される外貨ETFを想定した場合、理想的に儲かるシナリオは、ドルの価値が上昇する、つまり、円安ドル高になって、さらに短期米国債の金利リターンがつきますから、一番儲かります。しかし、円とドルは変動相場制で値段が動きますから、予想が外れて、円高ドル安になる。すると損します。この損失分が、短期米国債の金利(だいたい今だと2%-3%ぐらい)の範囲であれば、金利のリターンで損失分はチャラになりますが、それ以上にドル安の展開になると元本割れします。

なぜ、リブラが外貨ETFと定義されるとスケールしないのか?

答えは、すごくシンプルで、一般個人の参入ハードルが強烈に上がるからですね。フェイスブックのアクティブユーザーは全世界25億人いるが、ETFの世界についてこれるユーザーがどれだけいるのか?リブラの協会会員である企業は問題ありません。仮にリブラが外貨ETFになるならば、そのETFへの機関投資家のような存在になるわけです。しかも、以前、僕がこのブログで触れたように、かつての固定相場制時代の高度成長期の日本や、それを参考にドルとペッグして高度成長を成し遂げた中国経済と同じぐらいの莫大なリターンも得られます。詳しく知りたい人はこちらにまとめていますので、参考にしてください。

【シリーズ】リブラとは? – リブラ参加企業が得るであろうリターンは数千倍を超える可能性がある

しかし、個人はどうか?例えば、リブラの会員企業であるeBayで売れた商品の代金をドルで受け取らず、リブラで受け取りたいと思ったら、ETFを購入するという行為になるため、金融商品としての説明を受け、理解しましたよというサインをしないと買えないわけですね。しかも、配当は全くない。。。涙 ドルで受け取る分にはそんな説明は一切不要です。

もしリブラ協会が、会員向けに配当予定のリブラの準備金の運用益を、個人のリブラユーザーに配布する方針にプロダクト戦略を切り替えたならば、金利次第では、動くユーザーはいるとは思います。例えば、年間5%などですね。それでも、25億人まで普及させるのは、フェイスブックを普及させるのに比べると相当時間がかかるでしょうし、その方針に切り替えてしまうと、逆に、ETFと定義される逃げ場は無くなってしまいますね。この方針切り替えは避けた方が賢明です。

また、アメリカのように自己責任で資産運用する文化と教育制度が発達しており、現に金融商品に対する平均的なリテラシーが高い国民が多い社会であれば、外貨ETFと定義されてもある程度スケールすると思いますが、リテラシーの低い日本や、また、圧倒的にリテラシーの低い東南アジアでも、同じ外貨ETFとして定義されてしまうと、グローバル展開が相当やりづらくなるでしょう。

そういう意味で、第1歩目である「アメリカ政府がリブラをどう定義するか?」は超重要になると思います。特に、日本の政府は、金融庁のみならず、大半、先例が出てしまうと、それにすぐに「右習え」する傾向が強いので、そのまま流されてしまう可能性が高くなる。僕が、2014年からJBAを通じて、日本政府に対して世界的に先行する動きを取った理由の一つは、他が先例を出す前に、日本が先例を出す状況を作り上げるためでもあったのですが、リブラは北米から立ち上がっていますから、金融庁もアメリカ政府の判断を尊重する流れになる可能性は高くなるからです。

リブラは外貨ETFと言い切れるのか?

その上で、リブラが外貨ETFか?というと、僕は疑問が強く残ります。まず1点目は「法定通貨にペッグ」しているからです。外貨ETFという商品は、変動相場制だから成り立つ金融商品です。固定相場制をしくリブラに直接当てはまるとは僕は考えていません。ペッグすることにより、一般的なETFにはない元本保証の性質も持っています。そして、2点目。個人は、リブラで受け取るリターンは何もありません。電子マネーと同じです。ETFに近い仕組みで関わっているのはリブラ協会の会員だけですね。しかし、会員企業も、投資しているわけではなく、ステーブルコインの準備金として使うことになっており、バリーデーターノードとしてリブラのブロックチェーン・ネットワークを維持するために、その分の人件費とサーバー代を負担するわけです。この辺りはCOSMOSと同じわけですね。つまり、外貨ETFとは言い切れない要素を複数持っている。

しかし、これも政府との交渉ですから、リブラ側とその弁護士団の実力次第です。僕は、Orbのときは、「電子マネー」と定義することで、規制上、事業展開に圧倒的な優位性を作りました。電子マネーの購入や利用は本人確認すら不要だからですね。その辺りについては、こちらにまとめています。

【シリーズ】リブラとは? – 日本における規制について

ここは、まさにリブラにとってはかなりの正念場であり、実質、リブラのスケーラビリティを決めると言っても過言ではないと思います。決戦ですね。

米国議会の公聴会にはまずは、リブラプロジェクトのヘッドである元PayPalのデビット・マーカスが出席するようですが、僕は、このプロジェクトのキーパースンである、マーク・ザッカーバーグ、ピーター・ティール、シェリル・サンドバーグの三人が、どこまで結果を残せるか?にかかっていると思います。僕なら、ロビー活動して、確実に電子マネーで通しますが、そこまでやり切れるか、彼らの実力の見せ所です。

例えば、会員企業についてETF規制に準拠するが、個人について電子マネー規制で着地させるなどですね。何事も交渉です。

まあ、シリコンバレー企業の場合、日本のベンチャーと違って莫大な資本を持っているので、その資本をテコに、ETFだろうが、パワーゲームで浸透させてしまうという荒技もやれる可能性もありますが、あまりスマートとは言えないですね。

みなさんの参考になれば幸いです!

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