【シリーズ】リブラとは? – 世界恐慌の一因になったイギリスからアメリカの基軸通貨の移行失敗とLibraの関係性

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今後、世界経済システムの中軸が、国家経済システムからブロックチェーン上の新しい経済システムへの移行を進めていくにあたり、重要なある一つの課題について、僕の見解をまとめておきます。

それは、「基軸通貨の移行」という問題です。

世界恐慌のトリガーの一つとなった基軸通貨の移行失敗

世界恐慌の根本的な原因は、資本主義そのものです。その考えに関しては、僕は大学生のころより一貫して変わりません。資本主義は必ずバブルと恐慌を繰り返す。それは、通貨にインフレの作用があるからです。人間の文明社会の中で、唯一、無限にリソース化可能なのが通貨。それが故、自然経済と我々の経済システムは決して相入れることがなく、ここまできた。この点について、理解を深めるには、僕がOrb時代に書いたホワイトペーパーを読むのが一番良いと思います。

Orbのホワイトペーパー「Orbが目指す自然的な経済システムについて」

その上で、もう一つ注目すべき要因が、今日の本題です。それは「基軸通貨ポンドからドルへの移行」という話です。

大英帝国というと昔話のように聞こえるので、あまり現実味がない話のように聞こえると思いますが、僕たちに日本人にも、これを知る手がかりとなるよく知られたエピソードがあります。日露戦争ですね。当時、ギリギリの財政状態で日露戦争に入る選択肢をした日本政府は、新たに戦費調達をする必要がありました。簡単にいえば、日本の国債を買ってもらうということです。これを引き受けたのが、当時の日銀副総裁であった高橋是清ですね。

僕が一番好きな歴史小説「坂の上の雲」に出てくる有名なエピソードの一つです。名著の一つなので、まだ読んでない方はぜひ。

しかし、当時の国内にはその見込みは全くなかった。本当に貧乏な国でしたから。工業製品で唯一輸出できるのは絹製品ぐらいしかなかった時代の日本。だから、高橋是清は、ロンドンのシティに向かいます。当然、ウォール街ではない。現代ならウォール街に行きますよね。しかし、日露戦争が開戦した1904年当時は、イギリスのシティが、現代のウォール街でした。ロスチャイルド家を中心に世界の富がそこに集積していた。当時の基軸通貨は、アメリカのドルではなく、イギリスのポンドであったということです。

しかし、当時の大英英国は、ほぼピークと言える状態にあった。つまるところ、この日露戦争の後から、世界恐慌前夜の世界経済は、まさに、この大英帝国からアメリカ合衆国への覇権の移行期に入っていきます。特に、イギリスの没落が決定的となったのは第一次世界大戦ですね。そもそもなぜ、それまでは日露戦争をはじめ世界で局地的な戦争しか起きていなかったのに、1914年に起きた第一次世界大戦が世界的規模の大戦となったのか?

理由は、大英帝国が出来上がっていたからですね。世界中に膨大な植民地を抱えていた。そして、他のヨーロッパ諸国も、それに負けじと、ナポレオンのフランス第3帝国、ビルヘルムとビスマルクが作り上げたドイツ第2帝国、そして、ハプスブルグ家のオーストリア。ハンガリー帝国など、ヨーロッパ発の帝国群が、世界中に植民地主義を展開した。しかし、苛烈な植民地主義が、民族自決運動を活発化させていく。そういう中、起きたのが、サラエボ事件です。

From Wikipedia- サラエボ事件は、1914年6月28日にオーストリア=ハンガリー帝国の皇嗣であるオーストリア大公フランツ・フェルディナントとその妻ゾフィー・ホテクが、サラエボ(当時オーストリア領、現ボスニア・ヘルツェゴビナ領)を訪問中、ボスニア出身のボスニア系セルビア人(ボスニア語版)の青年ガヴリロ・プリンツィプによって暗殺された事件。プリンツィプは、大セルビア主義テロ組織「黒手組」の一員ダニロ・イリッチ(英語版)によって組織された6人の暗殺者(5人のボスニア系セルビア人と1人のボシュニャク人)のうちの1人だった。暗殺者らの目的は「青年ボスニア(英語版)」と呼ばれる反オーストリア的革命運動と一致していた。この事件をきっかけとしてオーストリア=ハンガリー帝国はセルビア王国に最後通牒を突きつけ、第一次世界大戦の勃発につながった。

そして、他の国に自らの植民地を奪われまいとする中で、それまでの日露戦争のように帝国主義対新興国の戦争ではなく、帝国主義対帝国主義の戦争になったわけですね。その結果、帝国が複数あったヨーロッパ経済は戦地となり荒廃します。

ここに、以前にも触れた国内政治経済重視を掲げるモンロー主義から、徐々にグローバル主義へと舵を切ろうとしていたアメリカが、ヨーロッパ経済復興を買って出てくるわけです。覇権移行のタイミングなどは、100年に1回あるかないかの出来事ですから、当然、スムーズに移行できるはずもない。アメリカは、ヨーロッパ経済の復興政策を通じて、莫大な富を獲得する。この富の移管こそが基軸通貨のポンドからドルへの移行の象徴でもあったわけですが、政財界のリーダー達は、そのことをよく理解していなかった。

どういうことかというと、アメリカは、自国経済の恐慌が、世界恐慌を引き起こすほどの巨大な影響を及ぼすとは夢にも思わなかったということです。だから、第2次世界大戦後のブレトン・ウッズ会議では、「アメリカの株式市場の暴落が、世界恐慌のキッカケになったよね」と反省できたのですが、1930年当時のアメリカの政財界のリーダー達は、まさかそんなレベルの影響力を与えるとは思ってもなかった。このことを非常に鋭く描いた本がポール・ケネディの「大国の興亡」です。名著の一つですね。

 

これは史実展開からの説ですが、もう一つ興味深い理論を展開しているのが、イマニュエル・ウォーラーステインのシステム理論ですね。

彼の理論は、経済学の中では、完全異端扱いですが、僕は本質を付いていると考えています。彼の理論では、一つの国家体系のシステムが、別の国家体系に移行するとき、つまり、今回の話でいうところの、イギリスからアメリカへの覇権主義の移行期は、多くの場合、システム移行期に伴う混乱が生じるとしており、その落差が激しいほど、世界システム全体に動揺が走ると話しています。

まあ、システム開発の世界で言えば、組み込み開発でしか作っていなかったシステムを、クラウドやオープンソースベースに切り替えると大半バグが大量に出てシステムトラブルが頻発するというのと似たようなものです。全く性質の違うものへと移行する際は、混乱が伴う。

そこで、そう、ブロックチェーンの話になっていきます。

国家経済システムからブロックチェーン上の新しい経済システムにいかにスムーズに移行させるか?

というテーマですね。国家経済システムは、瀕死の病人です。放っておけば、また資源の取り合いをはじめて第3次世界大戦を起こすリスクを常に抱えている。先のアメリカのように、ブロックチェーン産業のプレイヤー、具体的にいうと、アルトコインのプレイヤー達が、その準備がきちんとできていないと、アメリカ経済の衰退と共に、未曾有の経済的混乱が起きるリスクがある。

例えば、現FRB議長のバーナンキ氏はとても興味深い発言をしているのですね。詳しくはこちらにまとめています。

FRBパウエル議長とトランプ大統領の発言から読み取く基軸通貨ドルの放棄とビットコインの台頭 #1

彼などもアメリカはもうそろそろ基軸通貨ドルの面倒を見るのは限界だと感じ始めているということです。

僕は、この基軸通貨ドルからの移行先として、引き続き、ビットコインが重要な役割を果たしつつ、もう一つ重要な役割を果たすのが、リブラだと考えています。なぜかというと、上で述べたような話を視野に入れて動ける人材がリーダーに立っているからですね。特にピーター・ティールがそのことを一番よくわかっていると思います。彼については、こちらにまとめています。

シリコンバレーで絶大な影響力を持つと呼ばれる「ペイパル・マフィア」とは?

僕が、Orbで描いた藩札2.0は、日本円に変わる通貨システムを藩札というコンセプトから作り上げ、いずれ日本円にとって変わる構想を描いていたのですが、リブラは、以前から話しているようにそれと同じ戦略で進めているわけです。ただターゲットは基軸通貨ドル。その意味で、リブラの中核プレイヤーが、アメリカにいるというのは、実は、理想的ということですね。イギリスのときのアメリカのように、外国ではなく、アメリカの中で、アメリカの旧経済システムの動きを見つつ、自分たちの新たな経済システムを主役に育てていく。リブラが、なぜ、仮想通貨市場に取って必要かは、こちらにまとめています。

【シリーズ】リブラとは? – Libraが立ち上がらなければ、ブロックチェーン上の新たな経済システムは完成しない。

こう考えると、今後の仮想通貨・暗号資産の市場のリーダーシップはやはりシリコンバレーが取っていくことが理想的だと考えています。

みなさんの参考になれば幸いです!

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