米SEOのICO規制Regulation A+についての解説 – 使い方は要検討

アメリカのSECが、2015に施行したICOの規制フレームワークであるRegulation A +について僕の見解をまとめました。

Regulation A+とは、それまで、スタートアップなどの未上場企業が、事業を行うための資金調達手法として、法的に認められていたRegulation Dという規制フレームワークとは、別に設定された未上場企業向けの資金調達手段です。

Regulation A+の概要

Tier1とTier2という2つの調達スキームが定義されています。

  • Tie 1: 最大、USドルで約20億円($20M)まで調達可能。その分、規制要件も少ない。最低限の資産要件など的確投資家条件はなく誰でも投資することができる。このICOをする場合、特に州政府からの監査や、SECなどへの報告も要らない。しかし、州政府に対するICO実施に関する書類提出と審査は求められる。具体的には、SECにForm1-Aの提出が求められる。提出後、テスト的な資金調達を実施し、資金調達自体が可能な案件かの検証を行い、問題なければ、SEC側に許可をもらい、最大20億円までの調達が可能になる。
  • Tier2:最大USドルで約50億円($50M)までの調達が可能。この場合は、投資家に的確要件が加わり、所得の10%以内か、手持ち資産の10%以内のいずれか高い方の値までしか投資することが許されない。また、Tier1同様に、SECからの認可を受ける必要があり、州政府に対しても書類提出は求められる。ただし、このICOは、Blue Sky Lawsと法律から例外的に除外される。この法律は、資金調達する場合に、各州ごとに登記と的確条件に対する認証が求められ、年2回の監査やその他の書類提出が求められる。

Regulation A+の実施事例

また、これを受けての実際の事例として、2社紹介します。

Blockstack – Tier2

Blockstackは、ユーザーが100%アプリ上のデータやプライバシーをコントロールできるdApps開発プラットフォームで、Reg A – Tier2のICOを実施した事例。彼らは、ICO前に、すでにFoundation Capital, Wonklevoss Capital, とBlockchain Capitalから資金調達済みで、その上で、SEOより$28億円分のICOの許可がおりた。そして、STXという彼らのトークンを6200万トークン、価格は、1トークン、$0.30で売り出した。これは、北米でSECが認可した初のICOのケースとなったが、BlockStack側によれば、SECからOKをとるまでに要した規制対応コスト(大半は弁護士費用)は約2億円($2M)かかったとのこと。 対応期間は6ヶ月。

Blockstackのサイト

YouNow-Tier2

もう1社の参考例。YouNowは、動画ストリーマーのサービスで、イーサリウム上でPropsというトークンを発行している。彼らは、SECより、133万のPropsトークンを、$0.1369の価格での発行許可を得て、プリセールスで合計約22億円($22M)のICOを実施した。Blockstackと同じTier2なので、規制対応コストは同じぐらいと考えられる。

YouNowのサイト 

実用性面から見ると、Tier1の方が使える

というのが、僕の評価ですね。このブログでよく使っている、スタートアップの資金調達のスキームを使ってお話します。


Tierの上限金額20億円までというのは、シリコンバレーの資金調達モデルでいうと、かなり有望なテックスタートアップのSeriesA段階での資金調達のサイズです。一般的に、この段階で、全体の発行済株式シェアの15%から20%ぐらいのシェアを投資家に渡すので、時価総額は100億円ぐらいということですね。

Blockstackの規制対応コストを踏まえると、Tier2で2億。特に手間がかかるのは、投資家のスクリーニングコストと想定されます。上で述べた10-%ルールが適用されるからですね。投資家側に所得や資産関連の書類を提出してもらいチェックする必要があります。正直、このTeir2はコストが高すぎると思います。この辺りのスクリーニングを効率的にやるITソリューションが登場し、コストが劇的に下がるようであれば、検討可能になってくると思います。

この点を踏まえると、その的確投資家の条件が必要ないTier1モデルであれば、規制対応コストは、多くて5,000万から1億の間ぐらいと想定します。うーん、それでもまだ高いですね。一般的なSeriesAラウンドのリーガルコストは多くても数百万円程度です。VCに当たるよう効率的に資金を集めることができるのであれば、使い道が出てくると思います。その場合は、投資家側のメリットを引き出す必要があるので、何か強力なインセンティブが必要になるでしょう。

これを踏まえると、シード段階で、以前にも話をした、転換権付きの債権か株式、いわゆるコンバーチブルの資金調達モデルで、ディスカウント条件をつけた上でトークンへの強制転換をつける形で資金調達し、3-4億ぐらいを調達。その資金の一部をこのICOラウンドに当てる形であれば、それなりに実用的な利用方法になると思います。

たとえば、特にトークンエコノミー のデザインの観点から考えて、トークンの単価を低めに設定して、数を発行する形にすることで、ユーザー=投資家の形をこのタイミングで整えることができれば、このユーザーベース自体が、トークンも保有するエンゲージメントの強い存在として、SeriesBのグロースステージにプロダクトを引っ張って行ってくれるので、今までにないグロースモデルを作っていくことができます。

トークンエコノミーのデザインで抑えておくべきポイントは、こちらの動画にまとめています。

Tier2を使うぐらいなら、ICOやIEOに対してフレンドリーな規制をとってくれているシンガポールなどへ法人登記の変更をしてバイナンスなどでIEOし、そこで追加資金調達行う方がよいと思います。シード段階で入ってきているVCは、登記変更先が嫌ということであれば(アメリカの投資家は、投資家保護の観点からデラウェア州への登記を希望することが多い)、IEOのタイミングで抜けてもらうのがよいでしょう。2億という金額感を聞いていると、IEOの方が対応コストは圧倒的に低いように思います。

また、SeriesA段階で、エンゲージメントの高いユーザーベースをある程度作り上げているので、IEOに進んでも、リテール投資家に対してアピールできる数字が整ってきているからです。

みなさんの参考になれば幸いです!

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