大半のBaaSの時価総額は過大評価され過ぎていると考えている。なぜか? #2

PaaSに比べてBaaSは卒業するタイミングが早くなる

例えば、メルカリは、まだ自前のデータセンターは持っておらず、今は、Google Cloudの上で動いています。アクティブユーザー数2,000万をもつスマホアプリが、まだGCPの上で動いている。かつては、FacebookやDropboxなどもAWSの上で動いていましたが、今では自前のデータセンターを構築しています。なぜか?

一定規模のユーザーベースとトラフィックの水準に達するとPaaSの料金体系より自前で構築した方がランニングコストが下がるからです。そのタイミングというのは、卒業するプレイヤーが少ないので、コスト構造のサンプル例があまり出回って来ませんが、僕の友人で、Orbのアドバイザリーをやってもらったいたものが、DropboxのInternational Product Headをやっていたときに、教えてもらいました。

しかし、BaaSはこれに比べると更に早いタイミングで卒業する時期がやってきているように実感しています。その背景は、トークンエコノミー です。以下は、僕のトークンエコノミー のデザインに関してまとめた動画のスライドからの抜粋です。持続性の高い優れたトークンエコノミー の設計には、横軸の4つの要素を満たす必要があります。縦軸は、僕のポートフォリオ戦略における4つのカテゴリです。


4つのカテゴリの中で、BaaSにとっての最大顧客は、Dappsですね。Dappsが、トークンエコノミー の観点から、BaaSを必要とする背景は、4つの要素のうち、特に、三番目のネットワーク効果の設計と実稼働、そして、拡張させるまでのフェーズが大変だからです。その上で、4つ目の非中央集権的なソフトウェアガバナンスまで同時進行でやるのは真面目にキツすぎるので、BaaSに頼ればその点も後回しにすることができます。しかし、ネットワーク効果が実稼働に載せることができると、もう卒業段階に入ることができます。ここが、PaaSとの違いです。

最大の理由は、自前のブロックチェーンを持った方がコストメリットがでることです。先ほどのAWSのケースと同じですね。特に、この傾向を強めているのは、大半のBaaSが、GASプライスにオークション制度を採用しているためです。AWSのように固定価格ではないし、利用レベルが高くほどボリュームディスカウントが受けられるわけでもない。むしろ、オークションで高い価格設定をした方が、マイナーが積極的に自分たちのトランザクションをさばいてくれるメカニズムが作用するので、利用価格が、PaaSに比べて高くなる作用があります。

これだと、早く卒業した方がいいわけですね。更に、この業界のミッションである運営母体自体を非中央集権的に運営していくモデルが必要なので、その点から、COSMOSがまさにそうであるように、バリデーターネットワークを自ら構築し、バリデーターネットワークに少しずつ自分たちの意思決定を委ねていく流れを作っていく必要がある。

例えば、Binanceは、もともとイーサリウムを使ってICOをし、BNBトークンはイーサリウムの上で動かしていたわけですが、2019年4月に、卒業しました。BinanceのBNBぐらいのトランザクション規模になれば、確かに卒業するのは頷けるのですが、Lino Networkはもっと早いです。Lino-Networkは、D-Liveというトークンエコノミー 版Youtubeを運営するテックベンチャーで、僕もB2C系Dappsの有望株として注目しています。

世界No.1 YoutuberのPewDiePie(ピューディーパイ)が仮想通貨版YoutubeのD-Liveと専属契約する業界インパクトの大きさ

彼らは、ICO後間も無く、まだ、自分たちのトークンを取引所にIEOもさせていないのに、イーサリウムを卒業してCOSMOSネットワークに移行しました。このニュースを聞いた時に、「アレ?」と思ったのですね。PaaSの世界ではまず起こりえないことです。

そして、これは、中長期で、Blockchain Interoperablityのレイヤーに位置するCOSMOSやPolkadotの動きから見ても、更にBaaSの卒業タイミングが早まる傾向になると見ています。

Polkadotで導入予定でのBondingについて

COMMOSやPolkadotでのBondingが導入されると更にこれが加速すると見ています。以下は、Polkadotのソフトウェア概念図です。COSMOSにはまだ実装されていないのですが、Polkadotでは実装が検討されています。何かというと、簡単にいうと、Polkadotのバリデーターネットワークのセキュリティとコンピューター資源を、Polkadotのネットワークに参加できるDappsが部分的に活用できるようになるのですね。もちろん、このための手数料は払います。しかし、COSMOSを例にとなるならば、これはかなりDappsにとっては早期にBaaSを卒業して、COSMOSやPolkadotに乗り換えるメリットが出てきます。

なぜなら、COSMOSを例にとなるならば、COSMOS HUBのネットワークパフォーマンスはかなり優れているからですね。以下の図がそれを表しています。以下は、COSMOS HUBを支えるTendermintのコンセンサスアルゴリズムのパフォーマンスです。

tendermint_throughput_blocksize

ノード数64で、秒間4,000件の処理が可能です。気をつけて欲しいのは、ノードの数です。イーサリウムのCasperは、COSMOSと同じPoSベースに移行する予定ですが、COSMOSのようにパーミッション型ではなく、パブリック型を堅持するようなので、するとノード数は64どころではないです。ちなみに、2019年8月時点のイーサリウムのマイニングに参加しているノード数は、2,000程度です。ここで読者が理解しておくべき鉄則は、ノード数が増えると、秒間あたりの処理件数能力は低下するということです。上のTendermintの数値を見れば一目瞭然です。

この壁をやぶるパブリックチェーンのコンセンサスアルゴリズムはまだ出てきていません。Orb DLTも、苦労して、かなりいい線行きましたが、パーミション型です。これができたら、コンピューターサイエンスの革命になるレベルで、ブロックチェーンに匹敵する発明です。

ですから、この辺りのテクノロジーの制約条件を理解しているディベロッパーであれば、COSMOSやPolkadotでBondingが実装されると、BaaSを使い続けるより経済的なメリットが大きくなることがわかるということです。僕はそう判断します。

この点を踏まえると、COSMOSやPolkadotは、Dappsに。バリデーターネットワークのセキュリティとコンピューター資源を提供するという文脈で捉えると、AWSとAkamaiを組み合わせたような存在になることが見えてきますね。

COSMOSとPolkadotの比較はこちらにまとめています。両者ともほぼ同じであり、COSMOS側に1st Mover Advantageがある状態です。

COSMOSとPolkadotの比較 #1

以上の点を踏まえて、僕は、ETHは、Casperが実装されてより、マイナーとして参加することも検討しているので引き続きウォッチしているのですが、他のBaaSは完全に投資対象からはスコープアウトしています。

イーサリウム以外の既存のBaaSは、以前のブログでも指摘していますが、今のBaaSのままでポジショニングを維持するのではなく、むしろ、BaaSのポジションを捨てて、自らがDappsを手がけてエンドユーザーのベースを構築して行かないと生き残れないと見ています。イーサリウムも超長期的には同じ課題を抱えていると思います。

理由としては、先のスライドにあげたようクラウド市場で、純粋にPaaSやIaaSしか提供していないプレイヤーのほとんどがニッチプレイヤーに成り下がっており、市場をリードしているのは、自らアプリをもつAmazon、Google, Microsoftの3社だからです。AWSのそもそものビジネスモデルのコンセプトがそうであったように、「自社の余ったサーバー資源を他人に貸す」というビジネスモデルが、BaaS事業の場合ももっともスケールすると見ています。

以上、みなさんの参考になれば幸いです!

関連記事